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【書評】レーモン・クノー『文体練習』   (2014/06/01)
文体練習文体練習
(1996/11)
レーモン クノー

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文体練習 (レーモン・クノー・コレクション 7)文体練習 (レーモン・クノー・コレクション 7)
(2012/09/22)
レーモン・クノー

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 今回の書評で扱うのはレーモン・クノー(1903-1976)。潜在文学工房ウリポの実質的なリーダーです(創立者は数学者フランソワ・ル・リヨネー)。彼は言語遊戯に特化した作家で、同時に詩人・数学者でもあります。
 のっけから愚痴をこぼしますゴメンナサイ。どの作品をピックアップするか非常に迷いました。私の好きなクノー作品は、1位『サリー・マーラ全集』、2位『青い花』、3位『聖グラングラン祭』です。ですので『サリー・マーラ全集』を取り上げ、ボリス・ヴィアン『墓に唾を吐きかけろ』やヴァレリー・ラルボー『A.O.バルナブース全集』やポール・マッカートニーの覆面プロジェクト「ファイアーマン」に絡めたお話をし、“非存在である架空作家”を“実在しそうな人物”へと補強する技術(=でっち上げ)について論じようと思っていました。で、次回の書評はサリー・マーラと同じく架空の少年作家を扱った『エドウィン・マルハウス』をイッチョやったろうと。そこまで計画を練ったんです。しかしいざ書き始めてみるとほとんど「訳者あとがき」の受け売りになってしまった上、すでに素晴らしい書評がweb上に存在したので断念しましたファッキン・嫉妬。(ちなみに素晴らしい書評というのはこちら→ Penny Lane : 皆いつも女に甘すぎる / Penny Lane : サリー・マーラの日記 /Penny Lane : サリー・マーラ全集
 そういった理由を持ちまして、甚だ芸がありませんが最も書評のしやすい『文体練習』を取り上げることにしました。挫折に弱い平成男子ですみません。
 『文体練習』は『地下鉄のザジ』と並ぶクノーの代表作。邦訳は2種類出ております。朝日出版社の朝比奈弘治訳(1996)と、水声社の4人共訳(2012)。水声社版『文体練習』はレーモン・クノー・コレクション全13巻のうちの第7巻です。参考までに以下コレクション全巻を挙げておきます。
 ①はまむぎ(1933)
 ②最後の日々(1936)
 ③リモンの子どもたち(1938)
 ④きびしい冬(1939)
 ⑤わが友ピエロ(1942)
 ⑥ルイユから遠くはなれて(1944)
 ⑦文体練習(1947,1963)
 ⑧聖グラングラン祭(1948)
 ⑨人生の日曜日(1952)
 ⑩地下鉄のザジ(1959)
 ⑪サリー・マーラ全集(1962)
 ⑫青い花(1965)
 ⑬イカロスの飛行(1968)
 ──その他邦訳が刊行されているのは長編小説『オディール』(1937)、短編集『あなたまかせのお話』(1981)、エッセイ集『棒・数字・文字』(1965)、詩集『100 000 000 000 000の詩篇』(1961)です。

 さて。何から話しましょうか。作品そのものの性質に取り掛かる前に、2種類の邦訳の差異について解説しておきますか。
 朝比奈訳は稀代の名訳と絶賛されています。フランス語から日本語に翻訳するのが難しい文体についても「女子校生」「ちんぷん漢文」「いんちき関西弁」などでカヴァーし、当時の読書界に衝撃を与えました。私が個人的に唸ったのは「リポグラム」。原文はペレックの『煙滅』(当時未邦訳)同様「e」抜きで成されているのですが、日本語訳ではア段のみで文体練習をしております。これには度肝を抜かれました。
 朝比奈訳の最大の弱点は値段が高いということ。赤黒の二色刷、活字のサイズや配置を変えるタイポグラフィが原因の一つと思われます。今でこそ銀シャリを頬張っていますが当時の私は稗と粟を主食としていました。腹の足しにならない書籍を購入するのは相当な勇気が要ったものです。そんな、清水の舞台からバンジージャンプする覚悟で買った朝比奈訳ですが、別れた女に貸したまま返ってきません。買い直す気にもなれず、今回の記事は記憶の糸をたぐり寄せて書いております。誤りがあれば謝ります。
 後発の4人共訳は、その成立がややドラマチックです。日本におけるウリポ研究の第一人者であった松島征がいよいよ本領発揮、クノーの『文体練習』を出版しようと準備しますが、先に朝比奈訳が出版されてしまい計画頓挫。立ち消えになるかと思われた企画は水声社レーモン・クノー・コレクションの立ち上げにより地獄の底からオギャーと立ち上がります。しかし文体99+4篇のうち60篇を訳し終えたところで松島征は天国に召されてしまい、衣鉢を継いだ弟子3人が訳稿を仕上げたという経緯があります。全米が泣きます。翻訳の方針としては、すでに誉れ高い朝比奈訳があったため日本語独自の言語遊戯は極力控え、原文に忠実な翻訳を心がけています。そのため笑いの要素が若干少なめです。代わりに解説がすこぶる充実しています。広汎に使われている挿し絵も楽しいです。
 それではそろそろ作品そのものについてお話をしましょう。
 『文体練習』はクノー自身が体験した些細な出来事を99種類の文体で繰り返した作品です。語られる内容は1種類しかありません。それはすなわち、「混雑するバスの中、ソフト帽をかぶった首の長い若者が隣の乗客に『足を踏みやがったな』とケンカを売るものの、空席が出来た途端ケンカを中断してさっさと座ってしまう。2時間後、同じ若者はサンラザール駅前にいて、友人から『コートにもう1つボタンをつければ』と助言されていた」というもの。たったこれだけの出来事をクノーはあの手この手で変奏してみせます。小説に物語のみを求める人は、私の書いた紹介文を一読すれば『文体練習』1冊読破したも同然ですので余った時間で耳掃除でもして下さい。小説に語り口や形式の面白さを求める方、『文体練習』はあなたに打ってつけの1冊と言えます。いわゆる「どこから読んでも良い作品」であり、通読したからと言って飽くことはなく、暇な時にパラパラめくって拾い読みするのも一興です。読み終えたら即刻ブックオフに強制送還すべき有価物ではなく、いつまでも手元に置いておきたい1冊──まあ、私の手元に朝比奈訳は無いのですが。
 では、具体的に99種類の文体はどういったものがあるのか。各文体の題名を並べてみましょう(左が朝比奈訳/右が4人共訳)。2種類の訳文の併置は、すでに誰か試みていそうで誰も試みていない(少なくともweb上では)本邦初の挑戦です。しかもコピペではなく全て人力での入力です。どうぞ刮目せよ下さい。

 1 メモ/覚え書
 2 複式記述/二重でダブル
 3 控え目に/言外の意味
 4 隠喩を用いて/喩えていうと
 5 遡行/巻き戻し
 6 びっくり/びっくり仰天
 7 夢/夢
 8 予言/予言
 9 語順改変/しっちゃかめっちゃか
 10 虹の七色/虹色
 11 以下の単語を順に用いて文章を作れ/つぎの語を文中で用いること
 12 ためらい/ためらい
 13 厳密に/正確に
 14 主観的な立場から/当人の主観
 15 別の主観性/もうひとりの主観
 16 客観的に/客観的な語り
 17 合成語/合成語
 18 ……でもなく/否定を重ねて
 19 アニミズム/アニミズム
 20 アナグラム/アナグラム
 21 区別/我、区別す
 22 語尾の類似/語尾類音
 23 あらたまった手紙/公的書簡
 24 新刊のご案内/宣伝文句
 25 擬音/オノマトペ
 26 論理的分析/構成分析
 27 念には念を/ねちねち口調
 28 無関心/無知蒙昧
 29 ぼく/過去(モノローグ)
 30 現在/現在
 31 ……た/終わった過去
 32 ……ていた。/終わらない過去
 33 アレクサンドラン/小唄
 34 同一語の連続使用/同じ語の反復
 35 語頭音消失/音の省略(あたま)
 36 語尾音消失/音の省略(おしり)
 37 語中音消失/音の省略(まんなか)
 38 俺はね/オレ語り
 39 感嘆符/感嘆
 40 あのー/そんでさ
 41 荘重体/仰々しく
 42 俗悪体/俗っぽく
 43 尋問/尋問
 44 コメディー/喜劇
 45 傍白/ひとりごと
 46 音の反復/同じ音の反復
 47 白日夢/怪談風
 48 哲学的/哲学的に
 49 頓呼法/とつぜんの呼びかけ
 50 下手糞/不器用
 51 無造作/ぞんざい口調
 52 偏った見方/一方的に
 53 ソネット/ソネット
 54 嗅覚/嗅覚
 55 味覚/味覚
 56 触覚/触覚
 57 視覚/視覚
 58 聴覚/聴覚
 59 電報/電報
 60 歌の調べ/頌歌
 61 漸増方式による文字の置き換え/入れ換え(音を単位に)
 62 漸増方式による文節の置き換え/入れ換え(語を単位に)
 63 古典的/古典風
 64 集合論/集合論的に
 65 定義/定義すると
 66 短歌/短歌
 67 自由詩/自由詩
 68 平行移動/平行移動
 69 リポグラム/リポグラム
 70 英語かぶれ/英語な漢字
 71 語頭音追加/鼻風邪OL
 72 語中音追加/浪曲風
 73 語尾音追加/どうぶつ語尾
 74 品詞ごとに分解せよ/品詞に分解
 75 並べ替え/漢字転倒
 76 前から後ろから/前から後ろから
 77 固有名詞/固有名詞
 78 らぞなぞね/ギョーカイ用語
 79 ばびぶべぼ/ノサことば
 80 さかさま/あべこべ
 81 ちんぷん漢文/めちゃくちゃラテン語
 82 聞き違い/ワープロ氏の勘違い
 83 いんちき関西弁/イタリア語かぶれ
 84 イギリス人のために/Iggy lease jean no term may knee
 85 子音交換/子音を交換
 86 植物学/植物学的に
 87 医学/医学的に
 88 罵倒体/侮辱的に
 89 食べ物/美食学的に
 90 動物たち/動物学的に
 91 表現不能/表現不可能
 92 モダン・スタイル/モダン・スタイル
 93 確率論/確率論的に
 94 種の記述/ブンタイとは
 95 幾何学/幾何学的に
 96 擬似農民ことば/田舎ことば
 97 間投詞/間投詞
 98 気取り/美文気取り
 99 意想外/意外性
 おまけ1 反動老人/反動的に
 おまけ2 俳諧/俳句
 おまけ3 女性の視点/女性的に
 おまけ4 数学/数学的に

 ハァ、ハァ……、予期していたよりもずっと面倒くさかった……。取り分けこんなに数列を打ったのは自作の小説で兵隊に号令を掛けさせたとき以来です。
 どうでしょう、そそられるものがありますか。『文体練習』は1942年に最初の12編が『十二面体』のタイトルで執筆され、その後1943~45年の間に前半部46編が少しずつ追加され、1946年に残りの文体が書き上げられ翌年1冊の本として刊行されました。1963年には改訂版が出版されますが、初版にはあったのに改訂版から漏れた文体がおまけの文体4つです。
 それでは次に99+4の文体1つ1つを、ごく簡単に解説していきます。(各文体の名称をもう一度打つのは自虐的過ぎるので番号のみで失礼します。)

(1) メモ書き。目の前で起きた小事件を書きとめた、そっけない文章。すべての文体の出発点。
(2) いわゆる重文。「重要文化財」ではなく、意味の重複している文の方の。「頭痛が痛い」的な。
(3) 2番目のしつこい文体と対を成すあっさりした文体。
(4)  これでもかってほどに比喩を使用。
(5) 結末から冒頭へ、未来から過去へ文章を綴る。
(6) 感嘆符(!)の多用。
(7) 夢の中での出来事として語られる。
(8) 昔(中世?)から現在を見た視点。
(9) 文法規則の無視。
(10) 虹の七色が文中に一度ずつ使われる。
(11) 「ロゴ・ラリー」というゲーム。
(12) 断定した物言いを避ける。
(13) 時刻・長さ・重さなどの数値に厳密。
(14) 若者の視点。
(15) ケンカを売られた人の視点。
(16) 若者・ケンカを売られた人を傍観する人の中立的な視点。1番目の文体同様、淡々としている。
(17) 二つの語を合成した造語。
(18) 例:朝でも夜でもなく、昼。
(19) 主人公は若い男ではなく、若い男のかぶっているソフト帽。
(20) アナグラムは文字の順序を入れ換えて別の言葉を造り出す言葉遊び。たとえば「おおつかばんそう(大塚晩霜)」のアナグラムは「おおうそばつかん(大嘘ば吐かん)」「そうおんつばかお(騒音唾顔)」「かばんおそうおつ(カバン襲う乙)」「かつおそうおばん(カツオ沿うオバン)」など。
(21) 音の似た他の語と間違えないよういちいち否定。例:蓮ではなくバス。
(22) 語尾に似た音を多用。脚韻と似ている。
(23) かしこまった手紙。
(24) 大仰な広告。
(25) 擬音の多用。
(26) 文章を構成する単語を細かく解説。
(27) 既出情報を必要以上に繰り返す執拗な語り口。
(28) 情報が不確定な、前の文体と対照的な文体。
(29)~(32) 4つの時制。
(33) アレクサンドランという古典的定型詩。
(34) 「納税者」という語が22回も使われる。
(35)~(37) 語頭・語中・語尾の音がそれぞれ省略されており、3つの文体を合わせて初めてまともな文章となる。モンティ・パイソンのコントにも全く同じネタがあった。
(38) 俺は俺はとまくし立てる自己中心的な文体。
(39) 感嘆符(!)の多用。文体6と同系統。両方収録する必要はあったのか…?
(40) 「あのー/そんでさ」の多用。実に口語的。
(41) ホメロス的な叙事詩の文体。
(42) 『地下鉄のザジ』でもおなじみ、音声そのままを写し取った表記法。
(43) 質疑応答。
(44) 戯曲。
(45) 内的独白が頻繁に挿入される。
(46) 原文では「bus」の「bu(ビュ)」の音が繰り返されている。
(47) 若者の幻影が1783年に立ち現れたという設定。
(48) 哲学用語の頻用。
(49) 物などに話し掛ける、古典戯曲の修辞。
(50) 文章初心者。
(51) ぎすぎすした会話。2部構成の現代劇。
(52) 若者に対する敵意ある眼差し。
(53) 古典的定型詩で、4・4・3・3計12行。韻を踏む場所が定められている。
(54) 重点は嗅覚ではなく言葉遊びに置かれている。原文はアルファベットがABC順に登場し、邦訳は意味の置き換えよりもあいうえお順にこだわっている。2種類の訳はいずれも「愛の匂い、飢えの匂い、おかきの匂い」までは同一。
(55)~(58) それぞれ味覚・触覚・視覚・聴覚に重点が置かれている。味覚はお菓子、触覚は性的、視覚は色や線、聴覚は楽器。
(59) 日本語訳では「カタカナ」「唐突な区切り」によって電報の文体を再現している。
(60) 古代ギリシアの詩。厳密な韻律。
(61)(62) 機械的な入れ換え。ナンセンスな効果があるが、文としてはめちゃくちゃ。
(63) ギリシア古典。
(64) 数学用語による描写。
(65) クノーが開発した「LSD=意味定義文学」という手法。各単語を辞書の定義する記述に置き換える。たとえば「僕は文体練習の書評をしている」という文章にLSDの操作を施すと「男が同等(以下)の相手に対して使う、砕けた自称はその作者が素材をいかに形象化するかの方法技術や芸事などが上達するように、同じ事を何度も繰り返して習うことの〔読者のために〕新刊の書物の内容を紹介・批評した文章をしている」となる。
(66) 日本の短歌。原文は5行で、各詩行は5・7・5・7・7の音節。
(67) 伝統的な韻律詩から脱却した、近代ヨーロッパの詩歌。
(68) ウリポのジャン・レスキュールが開発した「S+7」という手法(ただし、この文体では「S+6」)。名詞(S)を、辞書に載っている他の語(7個先)に置き換える機械的操作。予測のつかないナンセンスな文章が出来上がる。たとえば「僕は文体練習の書評をしている」という文章にS+7を施すと「ボクサーは分旦連乗の処分をしている」となる。この手法の拡大版として「M±n」があり、これは品詞(M)を同辞書内のn個前後の語と置き換える操作。
(69) フランス語で文字落としをするならば当然、頻出文字eが選ばれる。原文では(多分わざとだが)1箇所だけeを含んでおり、邦訳はそのエラーもみごとに訳出している。朝比奈訳は全文ア段のみだが1箇所だけイ段がある。4人共訳はイ段抜きで訳出しているがこちらも1箇所だけイ段の音を含んでいる。また、「69」という番号は2つのeに似ており、ペレック『人生 使用法』の欠落した第66章同様、クノーは意識してこの章をリポグラムにしたのに違いない。
(70) 原文はフランス語に混じって英語が聞こえてくる手法。
(71)~(73) 音の付け足し。それぞれ語頭・語中・語尾。
(74) 文章を分解し、品詞ごとに分類。
(75) 単語内の2音を入れ換え。
(76) 普通の文章に「前から」「後ろから」を過剰に挿入。
(77) 全ての名詞を、関連する固有名詞で統一。
(78) 肉屋の隠語「ルシェバン」。
(79) 子どもの言葉遊び「ジャヴァネ」。
(80) 反義語に置き換え。例:正午→深夜。
(81) 「マカロニ体」と呼ばれる他言語混淆文体。朝比奈訳は漢詩で翻訳。
(82) 同音異義語。
(83) 文体70のイタリア語版。
(84) 文体70とは逆に、英語風に発音するとフランス語が浮かび上がる仕掛け。
(85) 「コントルペートリ」と呼ばれる言葉遊び。(文体20、61、75と似た操作であり、どれか1つの収録でも良かったのではないかと思う)
(86) 植物に関する単語を用いてエピソードを語る。
(87) 侮蔑語の多用。
(88) 医学に関する単語を用いてエピソードを語る。
(89) 食べ物に関する単語を用いてエピソードを語る。
(90) 動物に関する単語を用いてエピソードを語る。
(91) 文体12と似ている。
(92) 20世紀初頭の文化人の口調。
(93) 懐疑的な文体。
(94) 「ポルトレ」という文学ジャンル。対象となる人物の風貌と性格を簡潔な文章で写生する、サロンの座興。
(95) 関数の問題文。
(96) 方言をふんだんに盛り込んだ口語。
(97) 間投詞のみ。この文体単独では事件の概要はわからない。
(98) 雅語や難語を多用した美文。
(99) 友人6名による会話。オチがつく。
(おまけの文体1) 右翼老人の駄弁。
(おまけの文体2) 文体66の収録により削除された。
(おまけの文体3) 若者に好意的な女性の語り。
(おまけの文体4) 文体95の収録により削除された。

 クノーはバッハの『フーガの技法』を聴いて『文体練習』の手法を着想したらしいですが、彼の『文体練習』も多くの人に刺激を与えました。フランス本国では外国人向けの教材として使われているそうです。ラーメンズの小林賢太郎さんはインスピレーションの源泉として「自宅用」「職場用」1冊ずつ完備しているそうです。そして日本のインターネット界では独自の文体練習が花開いており、取り分けアンサイクロペディアの文体練習は出色の出来。それからマット・マドン『コミック文体練習』も傑作です。

IMG_0581.jpg マット・マドン『コミック文体練習』「Two-in-One(Madden/Queneau)」より。

 今さらながら衝撃の告白をしますが私はクノーの『文体練習』そんなに好きじゃないです(うわー、今さらー)。特に35~37、61・62、71~73のウリポ的操作が成された8編は他の文体より面白さが格段に落ちますし、しつこいので3編に絞った方が良かったと思います(※日本語訳では単調にならないよう工夫がされています)。べらぼうに面白い文体もいっぱいありますが、この辺りはちょっと残念ですね。
 それと、別の事情もあります。実は2006年6月に私もオリジナルの『文体練習』を書いているのです。それがこちらです。(解説はこちら
 当時はまだクノーの『文体練習』現物を目にしたことがありませんでした(なにせ稗と粟の生活をしておりましたので)。そこで独自の『文体練習』を手作りして悦に入っていたのですね。ですからまあ、自分で書いた方に愛着がありますのでクノーの『文体練習』はそんなに好きじゃないのです。ファンの方ごめんなさい。
 ──もう8年前か。どうりで年を取るわけだ。最初の方で「挫折に弱い平成男子ですみません」と書きましたが平成嘘です。重ねてお詫び申し上げます。



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