とりぶみ
実験小説の書評&実践
BNSラジオ 14:51~16:00   (2009/05/01)
Ver.1.00【45枚】
DJケムリあふたぬ~ん:よいこのための起業術②
(クレームには悪魔の笑顔で対応だ/お店が急に停電したら/万引き野郎を引っ捕らえろ・パートⅠ~Ⅲ)

【クイックリンク】
クレームには悪魔の笑顔で対応だ
お店が急に停電したら
万引き野郎を引っ捕らえろ・パートⅠ-①
万引き野郎を引っ捕らえろ・パートⅠ-②
万引き野郎を引っ捕らえろ・パートⅠ-③
万引き野郎を引っ捕らえろ・パートⅡ
万引き野郎を引っ捕らえろ・パートⅢ-①
万引き野郎を引っ捕らえろ・パートⅢ-②





 あ。えっと。これマイク入ってるんですか。もう喋っても?えー、ゴホン。どうも。リサイクルショップ「お礼お礼ザキ」を経営しております山崎と申します。DJケムリさんとトークをするために来たんですが、なんか彼、急に雲隠れしちゃったみたいで…。名前通り人を煙に巻いたっていうか。なので、俺がしばらく単独で話す事になりました。
 まず、えーと。(放送台本代わりの紙ペラを読んで)「理不尽な客のクレームに、あなたはどう対応なさってますか」ですか。これに就いて話せばいいのかな。そうですね、うーん。クレーム対応は悪魔の微笑で乗り切れ──これが俺の持論です。
 ある日、事務所で水増し発注書を作成していた時のことです。休憩時間でも無いのにバイトの堀さんが事務所に入ってきました。俺は慌てて書類を隠し、「どうした」と訊きました。堀さんの手には新品未開封の電子辞書が握られています。当店では如何なる物でも買い取っているので、こんな物も持ち込まれるのです。電子ジャーや漬け物石、胎児やお婆さんを買い取った事もあります。
「店長。これ、いくらっスかね」
 電子辞書の値札を見ると、一万二千円くらい。結構な代物です。良い買取価格を設定してあげねば。
「じゃあ三百円で」
「ささ三百円スか!?」
 なんかボッタクリみたいですが、いらないので安いのです。こうして堀さんは売場に戻りました。俺は架空請求の伝票を切り始めます。すると堀さん、ほどなくしてまた入室してきました。
「安いって言われたんですけど…」
 あーそうでしょうね。
「で、もっと高くしろって言われて千円って言っちゃったんですけど…」
 いや、そりゃまずいよ。弱味につけこまれてどんどん値段を釣り上げられるだけだぜ。
「それでも安いって言われてるんですけど…」
 しょうがねー。俺直々に応対しましょう。
「なんか、かなり怖い人なんですよね」
 なんですとーーーっ!それを先に言ってちょーだいってのーーーー!
 レジに向かうと、居ました居ました、色つきサングラスをした角刈りパンチがウンコ座りしてます。まんま八休さんですね。
「お客様…お待たせしました!」
 最っ高の笑顔!
「あのですねー申し訳ないんですけどー三百円なんですよ~」
 絶妙の抑揚!
「あー?千三百円?」
「いえ、三百円になりますね~」
「さっき千円って言ったぜ」
 ここで、山崎さんのアビリティー“悪魔の微笑”が発動!
「すいません~。こちらですね、も~~~~、いいモノだっていうのはわかるんですけどね~~」
 俺の目を睨み続けるお客様。悪魔の微笑──笑っていながら困り顔で、困っていながら笑顔──でもって視線を外さない俺。
「うちの店はオモチャとかが主体ですんでー、やっぱちょっと安くなっちゃうんですよー」
 なおも俺の目をじっと見つめ続けるお客様。片や、全く動ぜず意に介さず、お客様の目を見つめ続ける、何とも言えねーツラの俺。
「質屋とかに持っていけば結構なお値段になると思うんですけどー、ホントすいません!」
 ここで歯切れ良く押し切る。もう、一歩も引かない。と言うかそんな電子辞書、いらない。明らかに盗品っぽいし。
「ちょっと待って」
 お客様、お仲間の元へ相談に行きます。うわぁ、お連れのみなさんもいかにも…。で、戻ってきます。
「いかがいたしましょう?」
「やっぱいいや」
「あ、そうですか?(山崎ウレピー!) おそれいります…」
 お客様が退店して店の安全を確認するまで悪魔の微笑は絶やしません。こうして、俺は理不尽なクレームなども難無くこなしているのです。いやー我ながらすばらしい笑顔だ。
 ところで、どんな顔してんだろ?鏡で見た事無いからわからない…。でもおそらくは、万人の憐憫の情を催させるに足る、「しゃあない、こいつの困り果てた様子・なおかつフリーキーでプリティー・それでいてかわいいかわいそうな味を醸し出すこの顔に免じて許してやっか」って誰もが思ってくれる、そんなツラをしてるんでしょうね。
 ちなみに。恐れ知らずに対応しているような感じですが、実際は結構ビビってます。そういうのを表に出すとつけこまれるので、何を言われようとどんなにすごまれようと、絶対に平常心を保つのです。泣きそうな顔になったりするとつけこまれますし、ヘラヘラし過ぎると怒りの火に油を注ぎます。ずーっと悪魔の微笑で。これぞ私のプロフェッショナル接客術。
 えーと、それからですね…。こんなこともありました。ある日、停電ん?えー、いったんCMみたいです。


(CM)
 絵馬斧糠工務店に務めている匿名希望からのお知らせです。お知らせというか警告です。
 就職活動の人たち、絶対に我が社を志望しないで下さい。賃金が安すぎます。源泉徴収で給料の九割が天引きされます。銀行口座が凍結されます。お年玉が取り上げられます。
 このような経済制裁ばかりでなく、肉体的被害も熾烈を極めます。剥がれ落ちた爪はネイルアートでおしゃれにコーディネート・曲がった腰にはコルセット・網膜剥離の目玉には度無しカラーコンタクト着用で普段と違った自分を発見・頬は痩せこけ肋骨が浮き出し体重激減去年のズボンが履けた!!全身これサイボーグ化です。もはや拷問。絶対来るな!



 すみません。CM入るタイミングっていうのがよくわからなくて。引き続き、リサイクルショップ「お礼お礼ザキ」の山崎が、失踪したDJケムリに代わってお相手を努めます。お店が停電した時の思い出・万引き犯を捕まえた時の思い出、二本続けてお送りします。
 えー、そのころ店内は改装中でして、大工さんが工事をしていました。店長として開店一時間前に出勤した俺は大工さんに挨拶を済ませ、レジ内の現金残高を計算したり釣銭準備金を入金したり便所掃除をしたりしていました。
 そのうちバイトさんたちも続々と出勤。朝礼を行ないます。
「おまえらしっかり働けよ俺はレジ打たねーから。おまえはまず、掃除機かけろ。おまえは事務処理をやれ。おまえは…そうだな、この本でも包んどけ」
 と、ソフトな口調で業務指示をし、開店し、自分の仕事に取り掛かります。
 二階で売場のメンテナンスをしていると、バイトの中村さんが何やら報告してきました。
「一階、停電してます」
「なぁにぃぃぃぃぃ!?」
 一階へ駆け下りる山崎さん、そこは噂にたがわぬ暗闇。どうやら大工さんの工具が電気を食いまくってブレーカーが落ちてしまったようです。
 事務所に設置されている配電盤へ急行します。と、そこには山崎さんに先駆けてレバーを操作する黒い人影が…!その正体は…!大工さんでした。人の店で何してんねん。
 ソフトな口調で「どけ」と命じ、復旧作業に勤しみます。しかし、直らない。うんともすんとも言わない。こりゃーお手上げだーってんで、電気屋に報告連絡相談(ポパイ)します。
 もしもし。ふむふむ。ほうほう。よしそうか、ありがとう電気屋さん俺やってみるよ!配電盤へ舞い戻る山崎さん。が、そこにはまたも黒い人影が…!大工さん、またもやブレーカーをいじってます。そこへちょうど中村さんがやって来ました。
「二階も落ちました」
 おいおい大工さん…。何やってんねん…。
 一階のレジに入っていた小泉さんもやって来ました。
「レジが停まっちゃったんですけど。やばくないですか」
 やばいですよ。店内照明はいざ知らず、ちっとやそっとの停電じゃレジへの電力供給は絶たれないはず。そういう設定にしてたので。
 ここで山崎さん、厳かな口調で宣言します。
「この店は、死んだ…」
 そんな事をシリアスにほざいてる場合ではない。
 大工さんに再び「どけ」とソフトな口調で命じ、電気屋に言われた通り操作してみる。でもダメ。全然復旧しない。こりゃ、直接修理してもらうしかねえな。
 幸い電気屋はすぐ来てくれる事になったが、お客様は容赦無い。暗闇の中でレジに並びまくっている。電卓でお会計をし、販売した商品を紙にメモしておくしかねえ。
「店長、レジが開かないんでお釣り出せないんですけど…」
 オーマイガー。えぇい、引き出しから釣銭準備金の棒金をバラしてお渡ししろ!
 そのうちに電気屋到着。待ってましたよ大将!よっ大統領!一緒にブレーカーを操作しましょう!
 ようやく電気が通りました。急いでレジカウンターに戻ってみるも、POSレジは正常に作動していない。それだけではなく、お客様並びまくってる!しかも皆さんムッツリしてらっしゃる!アルバイト店員たちの「レジを打つのは早いけど電卓は苦手。だって停電してるんだもん。しょーがないじゃん。ホントは早いんだけど。だって電卓苦手なんだもん」という、対応力の無さが招いた渋滞です。
 システム管理会社に電話して復旧方法を聴きつつ、山崎さんは得意の暗算を駆使してお客様を捌きまくります。電卓を打ってる時間がもったいない。
「レシート出ないんですがよろしいですか?」
「(不機嫌そうに)いいよとにかく早くしてくれりゃあ」
 そんな言い方はない。ありがとーございましたー。
「申し訳ございません大変お待たせ致しました」
「…」
 商品を奪うように受け取って退店していく、オカンムリのお客様。あのさー、お待たせしたのは俺じゃねーだろ。無能なバイトだろ。ありがとーございましたー。
 そんなこんなでレジは復旧しました。良かった良かった。あとはメモしておいた商品を端末処理していくだ


(CM)
(SE:時計の音)チッチッチッチッチ…。
 正確な時を刻む、電波時計。AKINAの電波時計。空中を飛び交う電波を受信し、一秒も狂いのない時刻表示を実現。本当です、本当に空中の電波を受信するのです。店頭に並ぶAKINA製電波時計をご覧なさい、どれも一秒たりとも遅れてないから。洗練されたフォルムと正確無比なメカニズム。これぞ二十一世紀、未来形のスタンダード。
 単一電池四個使用。電池交換後は電話の時報などで時刻を合わせて下さい。A-KI-NA。



 ラジオってのは意外と厳密な時間進行で放送されているんですね。CM入ってるのに気づかずベラベラしゃべり続けてしまいました。
 さて。停電も収まり、店は無事に回り始めました。しかし、この日の山崎さんの受難はまだまだ続くのでした…。
 午後四時くらいです。最近万引き被害がヒドイので店内巡回を強化しておりました。レジにほとんど触れずフリーで動き回る山崎さんがその任に当たります。
 と、コミックコーナーに四名ほどのガキが溜まっています。怪しいね。山崎さんは眼を着けました。その中の一人、赤いトレーナーを着たイナセな男の子が山崎さんを警戒し始めます。のみならず山崎さんの近くに寄り、「○○おっせーなー」などと不自然な一人芝居まで打ってくれます。
「へへへ…怪しいな」
 胸の高鳴りが抑えられません。山崎さんは棚のすっごい細い隙間から監視を始めます。
 うーん。
 んー。
 あーーーー。
 あ?
 あは♪
 取った!盗ったろ!?コミックコーナーとは関係の無い商品の包みを破った。破ったようだった。──あまりに細い隙間ゆえ、犯行現場の全貌は窺い知れないのであった。しかし「多分、サッカーカードか何かパクったんだろ」見切り発車で万引きと決めつける山崎さん、男だぜ。
「俺、先に出てるわ」
 ヨー!ナイスタイミングで店を出てくれますね。音一つさせず後を尾行する山崎さん、さながら現代社会に降臨した忍びの者。
 お客様、退店!万引き・確・定!やったぜ、一名様地獄にご案内だ。
「あーすいませんお客様、誤作動かと思いますが警報機が作動しましたのでお荷物調べさせていただいてよろしいでしょうか?」
 山崎さんの笑顔は正に悪魔そのもの!みるみる凍りつく少年Aの童顔。ちなみに警報機が作動したっていうのはもちろんウソです。
 カバンを開けるとなんだか色々入っています。どれが私物でどれが盗品か判断できません。コミックコーナーで破っていた肝心のサッカーカードも見当たりません。仲間に渡したのかも…。一瞬、山崎さんの脳裏に「もしかして俺、やっ・ちゃっ・た…?」というコミカルな音声が流れます。
 しかーし!そこで助け船を出してくれたのは他ならぬ少年A。明らかに少年Aの私物と思われるゲームソフトを手にした時、こう教えてくれたのでした。感謝。
「それは僕のです」
 そ・れ・は?
「それは僕のです」
 そうだろうね。じゃあ、他は?
「あのさ、ずっと見てたんだよね(あんまり見えてなかったんだけどね)」
「はぁ」
「隠すとタメにならねーよ?」
「はい」
「(ウキウキしながら)そんなさ!悪いようにはしないからさ!(←する気マンマン)盗ったんでしょ?」
「盗りました…」
 勝った。心理学部に通ってて良かったと思える数少ない瞬間。
「どれ?」ずっと見てたんだよねって言う割には全然わかっていません。
「これです」
 少年Aはドラゴンボール三十巻カバー無しを差し出します。しかし肝心のサッカーカードは出てきません。こりゃ他のヤツに渡したな…ってんで追求します。
「他にもやってるヤツいるんだろ?」
「いえ、あの。わかりません」
 わかんねーってこたーねーだろ。百パーセントかばってんなコイツ。俺も似たようなシチュエーションを何度も体験してっから、わかるわい。──いやいや俺は万引きなんてした事ないっスよ!マジ×3、マジですって!
「いいからこっち来なよ(オイデー)」
「あの、このマンガも、床に落ちてたんで、」
 落ちてねーよ。
「持ってっていいのかな…って」
 (笑)んなわけねーだろ。
「だからやってません」
「ははは(←天真爛漫・爽やかな嘲笑)、商品を店から持ち出した瞬間万引き確定だよ♪いいからこっち来いっての」


(CM)
【アナウンス】このラジオ局は、ご覧のスポンサーの提供でお送りします。
【初老の男】何、スポンサーが見えないって!そいつぁいけないよぉ、見えるよぉ。わしにゃしっかり見える、晩霜製毒株式會社の八文字が…!
【若い女】見えるはずの物が見えないなんて、疲れてませんかぁ?そんな時は、これ。晩霜製毒の“リゼルグ酸ジエチルアミド”!たった一粒で大空を舞う感覚…う~ん気ぃ持ちイイ~。
【アナウンス】リゼルグ酸ジエチルアミドは、用法用量を守って正しくお使い下さい。正しく使わないと死にます。正しく使っていても、警察のガサ入れには充分お気を付け下さい。
【初老の男&若い女】リゼルグ酸ジエチルアミド!わしは(わたしは)これで(これで)人間、やめました~。
(若い女の声:晩霜製毒です!)



 さー犯行現場に戻ってきました。ここからがまた面白い。仲間が拿捕されたとも知らず、残る三人のガキはノンキにドラゴンボールを愛読しています。
「おっす!オラ悟空!みんな元気に盗ってっかー?」
 とはさすがに言ってませんが、にこやかに話しかけます。
「おいっ、おまえらも万引きしてんだろ?」
 正確には、万引きは商品を店から持ち出さなければ成立しません。カバンにしまっただけでは無罪放免です。ですから、この発言は不可解。不可解と知っていながら言辞を弄する心理学部卒業生。
「え?してませんが…」
 敵はまず、シラを切る。ここでめげてはいけません。少年Aに尋問します。
「あと、おまえの他に誰が盗んだん?(全員だろ!)」
「いえ、知りません」
 こいつもシラを切ります。友だち想いでえらいねー泣けてくらぁ。
「あのさーこの子がさー、万引きしたんだ。でさー、あのさー、おまえらもしてんだろ!」
 我ながらすごい。全然論理が組み立てられてないすさまじいまでの二段論法です。
「いえ…してません」
「してないです」
「するやつが勝手にしてるんじゃないですか」
 最後の天然パーマに至っては裏切りとも取れる発言です。おおー、胸が高鳴り過ぎます、麗しき友情が崩壊しようとしています!
「君は盗ってないっての?」
「盗ってません」
「あ~そっかぁ。盗ってないんだ~。じゃあこりゃなんだ?」
 本棚に押し込められたパック袋、それはサッカーカードの残骸に他なりません!少年Aのカバンには入っていなかった、じゃあおまえさんが盗ったんじゃないのかね?
「いえ、盗ってません」
「君は」
「盗ってません」
「ほい」
「盗ってません」
 全員、容疑を否認!あっそ!いいんだよ、かたくなな態度取られてもコッチは全然困らねんだよ!
「あ~そっかぁ。それでも盗ってないんだ~。じゃーこの子に全部罪が行っちゃうね!」
「…」
「かわいそうだなー。みんなの罪を一人で背負って。重いぜー」
「…」
「これ(サッカーカードの残骸)もこの子一人の責任になるけど?」
「…」
「俺がもし君の立場だったら、正直に告白するね!そうして罪を一緒に分かち合うね!」
「…」
「かわいそうだなーおまえ。みんなの罪を一人でかぶっちゃって。おい、カワイソーだと思わないのー?」
「…」
「俺なら友情を取るね。俺なら絶対そうするね!(←んなこたない)」
「…」
 それでもダンマリか。ははは。
「取ったって言うヤツ、いないの?」
「…」
「ほんとかわいそうだなおまえ。仲間から裏切られて、一人でつらい目に合うんだねー」
 現場を立ち去ろうとする山崎さんと少年A。ここで、山崎さん振り返りざま「これがラストチャンスだよ?いない?」と決めぜりふ。
 やっとこさ山崎さんの誘導尋問成功!ここで少年Bが挙手!
「じゃあ俺も行きます…」
 かかりやがった(悪魔の微笑)。
「おっエライ!偉いナーきみ」
 なぜか万引き犯をほめる山崎さん。
「あとの二人、いいの?おまえら友情捨てちゃうんだ?」
「…」
「あーあ。最低だなおまえら。(少年AとBに向かって)おい、思いっ切り軽蔑しちゃっていいんだぜ?」
 それでも少年CとDは動く気配なし。ちっ、かからなかったか。
「じゃ、こっちさ来い」
 事務所へ連行しまっす!


(CM)
 盆栽評論家の江国です。『少年ラッド』で大人気連載中の『シメイチ』、これはいいですよー。まず、万引き犯の少年の可愛さ&悲哀がグッと僕の胸をつかみましたね。胸ぐらをつかまれたのです。
 『少年ラッド』の発行部数は沈む一方望む所だヘイガッテンむしろガッデムでしょうが、『シメイチ』はホント面白いので単行本が売れるよう微力ながら応援させていただきます。黒魔術による祈祷で。みんなも読もうね。



 まだまだ続きます。なんか、話すのが楽しくって楽しくって!実はですね、ここからの山崎さんは天使のように優しいお兄さんになっていきます。不思議…。
「そこ座って。これに名前と住所と学校名書いて。…あー中学一年生なんだ。何部?サッカー部?へぇー二人ともかっこいいもんねー。あ、何丁目何番地何号も書いてね。…わからねえって、中学一年だろー?わかるべー(気さくに)」
 書いてもらってる間、社長にホウレンソウです。お休み中なのに、寝る暇がありませんねゴメンナサイ。
「はい、書けた。じゃあね、ここに『私は万引きをしました』って書いてね☆」
 交番に通報します。
「お世話になっております…」
 出たー営業トーク。
「はい、はい。じゃあお願いします…」
 お巡りさん出動決定です。
「あ、あと、自宅の電話番号書いてね。親御さんに連絡させてもらうから」
「えっ、親に連絡するんですか!?」
「うーん、つらいだろうけど、します!わかるよ、その気持ち。俺も(略)すっげーつらかった。でも、仕方ねえんだ。万引きは、君らが思ってるほど軽いイタズラじゃねーんだ。立派な犯罪なんだ」
「うわぁぁぁ殺されるよ…」
 少年Aマジビビリ。聞けば、オヤジが少しクレイジーらしい。お気の毒である。
「ていうかね、万引きは悪い事なんだよ。俺はひったくりとか傷害(略)それでな、万引きで捕まった時のコツはだな、とにかく反省しまくって謝りまくる事。ウソをつかない事。ウソついてもすぐバレるからね、マジで。もう、自分からドンドン白状しちゃう感じ。これだよ」
 そんな「逮捕講習」を交えつつ、上長の到着を待ちます。
「それにしても、君、偉いね。感心した。これぞ真の友情さ。あの二人は、軽蔑しまくっちゃえよ」
 友情の崩壊助長にも余念がありません。ただね、ほんと少年Bは潔かったよ。まー、友だちが捕まっちゃったら俺も同じ立場を取ると思いますけどね!いやいやホントですってーへへへ。
 そんなこんなで社長入場。その後、ポリスメンも入場。山崎さんの優しいお説教の後に、あんな恐ろしい情景が訪れようとは…。詳しくはお話し出来ません。
 あとはオトナに任せ、山崎さんは売場に戻りました。と、まだ少年C・Dはドラゴンボールを読んでいます。そんなに好きなら買うなり盗むなりして家で読めよ。
「おまえらの友だち、大変な事になってるぜ…」
 山崎さんは少年CとDにありったけの侮蔑をぶつけ、レジに戻っていきました。
 一方で、少年Bにはホント感心した。これは本心からの言葉です。


(CM)
 MCジーブリーによるニューシングル『You Say Mean Yeah Car』が本日発売されました。ドキドキしながら試聴してみます。賞味期限を過ぎて明らかに腐りかけている塩辛をおそるおそる口にしてみる感覚に似ています。(音楽スタート)おっ、おっ、おぉ~!?こ、これはブームになるかも知れない…!(自分のマーケティング戦略の完璧さにほれぼれしてニヤケ笑いの止まらぬジーブリー本人)
 この続きは、今晩九時、BNSラジオ『カメラ・トーク+』にて。MCジーブリーが生出演。絶対聞き逃すな!



 えー、引き続き山崎です。なんか今ディレクターから聞いたんですけど、俺が万引き犯を捕まえた時の話、結構反響があったみたいですね。全国の店長さんから共感されたようです。ファックスも届いているようです。えーと、これを読めば?あーはい。
「山崎店長、はじめまして。あたしはデパートのおもちゃ売場で働いています。あたしも臨時的な万引きGメンとして活躍したことがあります。ラジオで紹介してもらえると嬉しいです。(山崎:…面倒くさいな)(山崎:あ。すみません。ただ読めばいいんですね。読めば)
 仕事を終え、制服を脱ぎ、私服に着替えて帰ろうとした時のこと。小さな男の子、そう、つまり未就学児童と目が合いました。手には新品商品がタンマリ。その子は咄嗟に後ろを振り向いてゴソゴソ。おや?
 男の子はそのまま店の外へ走り去っていきます。新品商品の姿が見当たりません。あたしは腕組みをし、ニヤニヤしながら後をつけました(山崎:いやらしいですね)。
 全力疾走の男の子は、店の見えなくなる所まで来ると足をゆるめました。この段階になって「ちょっと…」と話し掛けると、男の子は「無事にここまで逃げてきたのに!」といった感じの、驚愕の表情。思うように事が運んだ人を絶望の淵に叩きのめすのはたまりませんね!(山崎:性格悪い)
 男の子、股間が膨らんでいます。まぁ、リッパ。あたしが児童猥褻行為ばりにズボンの中身を要求すると、あっけなくごめんなさい。はい、こっち来てね。
 年端もいかない子供を犯罪者あつかいするなんて…と、世間の良心は言うかも知れません。あるいは、未成年の魔が差したあやまちであって罪の意識は無いんだから許してやれ、と言うかも知れません。罪を憎んで人を憎まずだぞ、と。
 罪を憎んで人を憎まず。いい言葉だと思います。あたしもその立場です。そう、罪を憎んだゆえ、年端の行かぬ小学生を引っ捕らえて脅したりもするわけです。あたし自身は万引きをした事がありません。どういうわけかキライなのです。そして万引き以上にキライなのがウソです。あたしは人をだましまくってこれまで生きて来ましたが、それはすべて悪意の無い悪意的冗談です(山崎:意味不明だね)。あたしはうそつきを人殺しよりも激しく憎みます。ですので、万引き犯が開口一番やってません本当ですとホザくのが、腹立たしくてしょうがありません。どうにかしてコイツをひでー目に遭わせてやる!ってな気分になります。素直に殺りましたと白状する殺人犯の方がよっぽど好感触。」
 なるほど。これは感じ悪いですね。だけど、万引きの被害に悩まされる店員たちの偽らざる本心でしょう。わかる。わかるなぁ。「万引き、カッコワルイ。俺、8341」の精神で、めげずに頑張って下さい。
 俺だって、中学生を捕まえるのは心が痛かったです。面白おかしく話しましたけど、別にストレス解消目的で捕まえたわけじゃありません。できるものなら万引き犯なんか捕まえたくありません。伝わりにくかったかも知れませんが、実際はものすごく緊張してました。
「万が一間違ってたらどうしよう…。夜道で待ち伏せされてボコボコにされたら…。もしピストル持ってたら?住所割り出されて放火されちゃったら?実はオヤジがどっかのグループの会長で、凄腕の構成員百人くらいに慕われてて、『おまえかぁ、坊っちゃんにイチャモンつけたんは』とか鉄砲玉が遊びに来たら…」などと失敗した時の事が脳裏に浮かび、もう、夜も眠れない!昼眠ります。
 しかし坊っちゃんが「それは僕のです」と教えてくれた瞬間から、一種のゲームに昇華しました。もう、ウッキウキ!
 えーと。あー。あ?あ、CMです。


(CM)
 …。
 あ、生CM?俺が喋ってもいいんですか。広告出稿料は?え、いらない?いらないんですか。マジですか。やったー。ラッキー。
 えーと。何を言えばいいんだろ。とりあえず、店の名前は「お礼お礼ザキ」です。リサイクルショップです。何でも買います、買い取ります。家電・家具から、自動車・お子さんまで、なんでも幅広く買い叩きます。いえ、あの、なんだ。そう。高く買い叩きます。
 以上、リサイクルショップ「お礼お礼ザキ」店長の



 山崎でした。みんな来てね!
 あら。そうですか。すみません。
 えー、DJケムリはまだ戻ってきません。どうやら喫煙所で煙を吹かしているようですね。もうすぐ戻ってくると思います。もう一通、ファックスを読めとのことです。ゲストで出演するはずだったのに、なんか妙な事になっちゃったな(笑)。
「DJケムリ、こんにちは(山崎:ケムリじゃねーよ!)。俺のサクセスストーリーを聞いて下さい。CD屋さんでバイトをしていたころのこと。俺は万引き犯捕縛のプロフェッショナルでした。その日も怪しげな高校生がCDを物色してらっしゃいましたのでありえない場所にひそんで様子を観察させていただきました。ニヤニヤ笑いながら覗いていましたので人から田代まさしと罵られても異存ございません。
 で、彼は盗りました。キョロキョロあたりを見回しながらカバンの中にMCジーブリーのCDを収納いたします。よっ、この収納名人!
 しかしここでお縄チョーダイに踏み切るのは時期尚早。万引き行為は代金未払いの商品を店外に持ち出した瞬間に成立します。カバンにしまった程度では犯罪にはなりません。その上、カバンにしまった程度で尋問をすると『え?手に持つのダルいから入れておいたんだけど?勝手に犯罪者に仕立てあげてんじゃねぇ。冤罪事件だ!ダチ公呼ぶぞコラ…?悪そなヤツとは、だいたい友だち』と逆ギレされるおそれもございます。いかに尾行しているのがバレないようにマークして、退店と同時に『お客様。おそれいりますブッ殺すぞ?』と言えるかどうかがカギなのです。
 が、ここで事件が。『あいつ万引きしてますのでー。注意して下さいね☆』とバイト仲間に伝達していたところ、店一番のうっかり八兵衛がとんだヘマを!積極的に接触しやがった!
 おそらく、見張っていたの、バレました。そうなると商品をどっかに放置してお客様ご退店の流れとなります。せっかく見つけた獲物、勝負に出ねば!マンツーマン・ディフェンスを敷き、商品放置のスキを与えないようにします。スッポンのように食らいついて離しません!
『なんですか。』
『いいえ、なんでもございません(すっごくイイ笑顔!)』
『なんだよ!ついてくんなよ!』
『おそれいります。なんでもございません。ぃらっしゃいませー』
『てめぇ、ぶっ殺すぞ!』
『おそれいりまーす』
『なんなんだよ!オレがなんかしたのかよ!』
『お客様がそのおカバンの中身をちゃんと買っていただけるかどうか見届けるまでは、見守らせていただきますー。おそれいりますー』
 おそれいります多すぎ。完全に形骸化したあいさつですね。しかも、口調はナメてるくせにけっこう緊張しております。
『ああ、取ったよ!カバンに入れて置いて、今からレジ行こうと思ってたんだよ!買おうと思ってたんだよ!』
 出ました。さっき説明した通りだったでしょ?カバンの中からCDが取り出され、無造作に置かれます。MCジーブリー以外もやってやがりました。自己申告アリガトーウ。
 で、コノヤロウ、そのまま帰ろうとします。本来ならばここで『万引き逮捕失敗、残念』なわけですが俺は面白いことはトコトンまで突き詰める性格なので逃しません。逃がすはずがございません。
 万引き防止用のタグが抜かれたCDを手に取り、『あのさあ、こんなに包装ビリビリにされちゃ、もう売り物になんないんだよね。器物破損罪ってやつぅ?』と、いかにもムカツク物言いでせまります。器物破損罪の定義を正確に把握していたかどうかはイマイチ不明ですが、このドタンバでなかなか機転の効く人です。こーゆー時だけ頭が回るんだからホントにもー」
 …え。ここでまたCMですか。せっかくいいところだったのに!


(CM)
 ここからはうんちの提供でお送りします。
「漫画家のうんちです。愛読者のみなさまにお知らせです。新作が描けました。どうせ出版社や本屋に作品を持ち込んでも帰れの一点張り・スウィートハートを傷つけられるだけでしょうから、どうにか大金を手に入れて自費出版で頑張ります。宝くじが当たったり、知らない人から突然遺産を相続させられたり、路上で一億円拾ったり、スポーツ感覚で試した銀行強盗がたまたま成功してしまったりした場合、耳かきに関するハウツー本を百万部刷ろうと思っております。タイトルは『この桜吹雪が目に入らぬ(痛い)』にする予定です。絶対買ってね。
 ──あのさ。これ、実際にラジオ放送する際はうんちって部分スポンサーの名前に変更してくれるんだよね。昼頃CM聴いたけど直ってなかったよ。今度はちゃんと頼むよ。うんちのままじゃ俺が誰だかわからねえからさ」
 ここまではうんちの提供でお送りしました。



 やっとCM明けた。さっさと続きを話しましょう。
「言い逃れのできなくなった高校生、ここでナント!若者の特権!逆ギレの行使に出ました!(山崎:俺も高校生と同じような行動に出ると思います。こんなバカそうな人にあんなムカツク言い方されたら)
 ここでスロー再生です。高校生ー、コーブーシーを~、にぎったぁああー。うーしーろーにー、たーめーてー、なーぐーるー用意ー。でーもーなーかなーかー殴らなーぁーいーぃー。どーうーやーらー、ちょうっとー威嚇してーるー様子ー。
 ここで再生を一時停止します。時間の流れが止まる!心の中に、いろいろな思いがよぎる…
『これで殴られたら傷害の現行犯逮捕!もはや万引きで捕まえるのはムリがあるんだけど、これなら確実だね。殴ってお願い!おまえをこのあとヒドイ目(ブタ箱行き)に遭わせられるなら多少の痛さもガマンするど。非日常大歓迎。面白い事件のためなら身体を張ります』
(山崎:性格悪いですね。もしかしてマゾなだけかも?)
『でも、コイツあんまりケンカ得意そうじゃないし、俺はこう見えて結構アブナイほうだし、殴り合いになったら絶対勝てるな』
(山崎:またまたー、悪ぶっちゃってー。ホントはモヤシっ子だろ~?)
『あーおなか空いたー』
(山崎:関係ないだろ!ぜったいそんなこと思ってなかっただろ!)
『誰かと一発ヤリたい』
(山崎:下品だよ!)
『早く人間になりたい』
(山崎:そりゃ妖怪人間ベムだよ!)
 通常再生します。世界は再び動き始めます。大ピンチ!殴られちゃう。高校生のパンチは、今まさにそこまで迫っている。あやうし、彼の運命は!?
 ここで黒く巨大な影が出現、頼れる男・ガタイのいいバイト仲間松井さんの登場ダー。
『ふざけんなよてめぇこのブッ飛ばすぞ』
 高校生の襟元をつかんでブインブイン揺らします。商品陳列棚にガツガツぶつけるわ大声でタンカ切るわ、店内はどないしたんやの大わらわ。その様子を松井さんの背後から見守る俺。見守るといっても、そんなおだやか~な顔ではなく、マユゲは八の字です。いえ、あの、体面上いちおう怒った顔をしておこうかな、と。が、手出しはしません。ヘタレです。ホントは色々やりたかったんだけど、松井さんがあまりにもコワイので『ああ。気の毒だな』苦笑いしておりました。
 事務所へ、連行!
 高校生、頭が冷えたのか、松井さんの迫力に圧倒されたか、一転しておとなしくなります。俺と松井さんはタバコを優雅にふかしながらあぶないデカ気取りで事情聴取を始めます。
 『おまえ、名前は』『電話番号』『学校どこ』など、きわめてブッキラボーに質問していくわけですが、ここで初めて高校生じゃないことが判明。高校の制服を着ているチャラ男でしたが、実はプータローらしいです。制服は友だちの借り物ですって。まぁ、悪い子。
 彼の経歴を散々バカにしたあとで、警察を呼び出す運びとなりました。と、ここで彼は猛烈に謝り始めました。
【高校生】あの、マジ反省してるンす。ほんと…。(松井さんの方を向いて)さっきはスミマセンでした!
【松井】ハァ?なにが??(山崎:極道!)
【高校生】警察呼ぶんスか。
【俺】呼ぶよ!今、電話するヨ!(山崎:言い方が卑劣…!)
【高校生】親にも連絡するンすか。
【俺】するよ!おまえ、未成年ジャン。未成年だと責任は親に行くんだよ。ロクでもねー保護者としてな!(山崎:言い方がやらしい)
【高校生】うわ~マジかよ。マジ、オレ、なんてことしちゃったんだろ。
 頭をかかえ、猛省し始めます。どうやら母子家庭らしく、お母さんを悲しませたくないらしいのです。あら…根はとっても優しい子じゃない…。ちょっと母性本能くすぐられちゃうわよ…。
【高校生】あの、、、警察に連絡行くのはいいンすけど、母ちゃんには内緒にしてもらえませんか。ホント、お願いします。ごめんなさい。マジ反省してるんで、母ちゃんだけには!
 ここで、出ました。一度は声に出してみたい日本語が。
『ゴメンですんだらケーサツいらねんだよ!』
 小学生がくちゲンカの際にしばしば用いる常套句ですが、いい年コイた大人になるとなかなか使う機会が無くなります。なのに、使ってしまった、と。少年の思いやり、そんなモン無視!鬼畜であります。鬼平犯科帳を気取っていながら鬼屁違反課長だった、っていう感じです。今のギャグが面白かったとしたら、それは俺が天才だからです。今のダジャレがオヤジギャグだったとしたら、それは俺の友だちが言ったギャグだからです。いずれにせよ、俺に責任能力は問えません。
 しかしあれですね。ケーサツは呼んでもいいって言ってましたからね。意味、通じてないですよね。勢いだけだった。」
 なるほど。長ったらしいファックスありがとうございました。万引きは未然に防ぐのが一番なんですが、かなり取っちゃってる様子だったら拿捕に踏み切るのも仕方ないですよね。
 ──あ、ここで山崎、お役御免のようです。DJケムリ戻ってきたのかな?えー、なんかロングリリーフになってしまった。ギャラは倍額要求します。もちろんです。支払いを拒否したら即行で訴訟です。
 ではでは。本日は、御来店いただき、誠にありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。次も引っ捕らえます!リサイクルショップ「お礼お礼ザキ」の山崎でした。


(CM)
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