とりぶみ
実験小説の書評&実践
BNSラジオ 10:30~12:00   (2009/03/01)
Ver.1.02【59枚】
DJライオン電波電話部(後半部分)
(虹をつかむ男/信頼教に入信せよ/アンチBNS/引退芸能人/自称天才アーティスト/放送禁止用語/ね/忍者の彼/結婚式のご祝儀って/安全日と危険日/避妊否認/老紳士の愛講座)

【クイックリンク】
虹をつかむ男/信頼教に入信せよ
アンチBNS
引退芸能人①
引退芸能人②
自称天才アーティスト/放送禁止用語①
放送禁止用語②
ね/忍者の彼
結婚式のご祝儀って
安全日と危険日
避妊否認
老紳士の愛講座





【DJ】ちっ。胸くそ悪い想いしちまったぜ…。気を取り直して…。よっしゃ来ました元気ですかー!!復活っ!それじゃ改めてー。ライオンのぉ~、電波っ!電話部っっっっ!
(BGM:笑っていいとも!の「そうですね」を念仏詠唱風にアレンジした讃美歌)
 はい始まりました「DJライオン電波電話部」です。言ってみればテレフォンクラブ略してテレクラなんですよ。いや、違いますね。前にも言いましたね。いちおう、ここから聴き始めた人のためにもう一度説明するね。電話を通じて、まともな常識人たちと、ま・と・も・な常識人たちだけと!わたくしDJライオンがおしゃべりしてしまうというわけです。バカは掛けてこないで下さい疲れるから。
 あなたが思っている事、なんでも白状して下さい。愛してるとか銀行の暗証番号は○○○○だとか遺産を相続してくれとか大歓迎です。
 番号言うよ。4649-77-0707。4649-77-0707。くれぐれも間違えるなよ、ケアレスミスは命取り。マジで。
 ジャンジャン電話かけてこいよな!お電話お待ちしておりま…って、さっそくかかってきたぜ。やらせもいいとこだなオイ!

【お客】こんにちは。
【DJ】どうもー、DJライオンです。コンニチワンワンワン!ライオンらしさをアピールしてみました。(←ライオンがネコ科と知らないゆえに起きた初歩的ミス)
【お客】BNSはいいラジオ局だ。いつも聴いてますよ。
【DJ】ありがとう!ますますやる気が出てきたよ!
【お客】一般常識的な意見・論調は他局が放送している。BNSが放送する必要はない。くだらない、バカバカしすぎて誰も言わない事を言う。そこがいい。
【DJ】ほめられたのか…?まあ、いいや。どうもね。
【お客】そんなBNS専属DJを男と見込んで教えてほしい事がある。誰も教えてくれないんだ…。「バカじゃないか」とか言いやがって…。ううっ。
【DJ】泣くな泣くな。質問は何だ?戦隊物のヒーローになるにはどんなトレーニングを積むべきか、とかか?何でも答えるぜ。さあ、話してみなよ。
【お客】いいヤツだなおまえ…。やっぱりBNSに電話して良かった。虹ってあるじゃん?
【DJ】あるね。
【お客】きれいだよなーアレ。
【DJ】きれいだね。
【お客】その中に入ろうと思って、自転車を走らせたんだ、俺。虹が消えちゃう前に着こうと思って、そりゃもう必死に。
【DJ】それはごくろうさま。
【お客】三時間くらい漕いだかなぁ、違う県に入ったなぁ…。
【DJ】それはごくろうさま。
【お客】でも、虹ってかなり遠くに出るのな。着く前に消えちまったよ。あんだけ全速力で走ったのに。
【DJ】それはご愁傷さま。
【お客】虹の出る時刻と地点って、事前にわからんもんかな。先回りしてスタンバイしようと思うんだけど。
【DJ】うーん…。なんて答えたらいいのかなぁ…。きっと、次のリスナーが答えてくれるさ。

【お客】虹の出る場所を知りたければ信頼教に入信せよ!
【DJ】いきなり宗教の勧誘ですか。なんなの、どんな宗旨のオカルト集団?
【お客】信頼教はオカルト集団ではない!お互いを心の底から信用し、相手の全てを肯定し、受け容れる。新世紀型のすばらしい宗教だ。
【DJ】へぇ。1へぇ。
【お客】みながみな、信じあえたら素晴らしいじゃないか。現代に欠けているのは信頼だ。信頼さえあれば法律はいらない。
【DJ】そうだな。道行く見知らぬ人すべてと、無二の親友のように信頼し合えたら、犯罪なんてなくなるな。
【お客】そうだ。家にカギをかける必要もなくなる。コンビニに店員を立てる理由もなくなる。警察という職業は廃業だ。戦争のない平和な世の中!軍人よ銃を捨てよ。ケモノを撃つ銃以外、廃棄せよ!
【DJ】刑務所維持費に税金を使う事もなくなるね。福祉や医療に力を注げる。
【お客】どうだい、すばらしいだろ。これを聴いているみなさま、そしてあなた、DJライオン!信頼教に入信せよ!我々と共に相互信頼の道を歩もうではないか!
【DJ】俺はおまえを信用できない。さいなら。


(CM)
 制作段階から、あきらかにクソゲー。売りさばくにはどうすれば良いか。答えは、宣伝しまくればいい。宣伝しまくれば客はだまされる。「広告にこれだけ力を入れてるって事はゲーム自体も力作なんだな」と。衝動買い成立!──内容に自信があれば、宣伝しなくても自然と売れるんですけどね。
 ニュータイプの音楽ゲーム『魔王陛下楽団の宮殿の笛吹き』新発売。
 これ以降はコマーシャルを流しません。「それが何を意味するか、わかるだろ?」



【DJ】コマーシャルを流さないって、宣伝費不足って事だろ?CMバンバン募集中!BNSラジオの広告効果は絶大ですよ!絶大に低いよ!
 …あ。毛見さん、スンマセン…。
 あーあー、次の人どうぞ。バンバン電話がかかってきてうれしいね。もしもし?
【お客】BNSラジオについて、忠告したいことがある。いや、警告だ。
【DJ】しょっぱなから威圧的だね。いいでしょう、BNSラジオは自由な発言の場、どんなお叱りも甘んじて受けます。ただし内容以外についてね。建物の外観が古いとか、給与が良くないとか、俺もそう思う。どうぞお話し下さい。
【お客】BNSラジオはね、道徳に反しているよ。公共利益を損ねている。誰も得をしないウソっぱちのニュースや法律に触れるコマーシャル、違法行為を促す教育番組、そしてDJライオン、君の不誠実なトークもな。不快だ、実に不快だよ。
【DJ】手痛いなぁ。あなた大学教授か何かですか。
【お客】歯科助手だ。だいたい貴社にはどんな企業理念があるんですか。あなたの番組はどのようなコンセプトの上で進行しているのですか。子どもには聞かせられませんよ。
【DJ】BNSのスローガンは「明日の自由より今日の晩ゴハン」で、「栄養ドリンクを飲み終わったらビンはゴミ箱に、フタは王冠コレクションに分別しましょう」をモットーにしている。どういう意味かはわからないけど…、社長が決めたのさ。俺自身はと言うと、中学男子のみずみずしい感性──つまり、どうしようもないバカバカしさを失わずに、諷刺や皮肉をやろうと心掛けている。社会に貢献しようとか世の中をよくしようとかそういうのはないよ。
【お客】ほら見たことか。公共利益はないのだ。そうして、リスナーの気分を害する。わたしのような、健全な一般市民の良心をな。そんなラジオ局、運営していく意味はあるのかね。
【DJ】あるよ。テキトーにベラベラしゃべってれば飯の種になるんだ。マゾっ気たっぷりの変態は意外といっぱい居るからね。いわゆる健全な一般市民様には関係の無い世界さ。文句があるなら聞かなきゃいい。──そうだな、たとえばここに、お堅い歯科助手さんがいるとする。彼はパチンコに興味が無い、むしろパチンコを悪質な賭博と憎んでいる。そんな彼は、パチンコ屋の店員という職業を軽蔑するだろう。世の中に不要な仕事・社会から必要とされてない職業だと決めつけるからさ。──しかしね。パチンコ屋の方ではパチンコ屋の方で、歯が丈夫だから、歯科助手という仕事を軽視しているんだ。それと同じさ。
【お客】ゴタクは結構。浅はかな見識で的外れな例え話をするのはよしたまえ。とにかく、BNSラジオに崇高な理念はないというわけだ…ハッハ。BNSラジオ、あんたらは社会のゴミだよ。
【DJ】そうかもね、生ゴミの集まりだよ。アンタは宝石かな。でもね、生ゴミは肥料になるぜ。宝石は煮ても焼いても食えやしねえ。
【お客】空虚な抽象言語を弄するのはやめたまえと言っている。ギリシアの哲学者・ソクラテスはこう言った。「哲学者はアブのようなものである」と。「国家という名の牛を刺し、動かすのだ」と。それが諷刺の持つ本来の力だ。だが、君たちはアメーバのような単細胞生物さ。諷刺をしても世の中を動かすほどの力もなく、誰も気付かない。ただただウザったいだけの存在。そうじゃないか。
【DJ】昔の哲学者はこう言った。「BNSラジオはアブノーマルである」と。もちろん、肥満体の人々にとってはデブを茶化した発言は面白くないだろう。俺たちBNSの番組のいくつかは、ある種の人間にとって不愉快なものかも知れない。現に俺だって自分自身の発言に痛痒を感じたこともある。だがな、諷刺ってなそういうもんだ。毒が無ければ何にもならない。ビクビクおびえ、相手を傷つけないように諷刺する──そんなバカがどこにいるだろ。俺たちの仕事は、アンタのように肩肘張ったお堅い気炎じゃない。鼻でバカにする罵詈雑言さ。傷つくヤツが居ようとも、一方ではそれを面白がるヤツも居るってこった。
【お客】人を傷つけるのが仕事か。最低の仕事だ。
【DJ】ああ、最低な仕事さ。おまえのような暇人を相手にしなきゃならねんだからな。
【お客】フン。私の忠告を真摯に受け止め、常識人に迷惑をかけないようせいぜい気をつけてくれたまえ。
【DJ】ああどうも。ますますやる気が出てきたよ!


(CM)
 ポリステ専用ゲームソフト『893(パクサン)』。スマートに組長からの指令を遂行せよ。一般的なゲーム──ドラクエやマリオのような、動く物が視界に入ったらとりあえず攻撃する!敵という敵は全て抹殺する!みな殺しにしなければこの胸の熱いたぎりが止まらないっ!血だ、血が悪いんだ。呪われた家系が俺を殺戮に駆り立てる…!という野蛮な感じではありません。お子様にも安心して勧められます。



【DJ】はい、お待たせ。こちらBNSラジオだよ。もしもし?
【お客】わたし。わたしよ。
【DJ】え、あ…。はい。あの…?
【お客】わたしだってば。
【DJ】え…。チエコちゃん?
【お客】誰よそのチエコちゃんて!ふざけてるんでしょアンタ。オヒメよオヒメ。
【DJ】オヒメ?どちらさま?
【お客】本当にわからないの?アンタそれでも業界人!?女優の崎田オヒメよ。
【DJ】ああっ!なんだっけ、あの、鹿が出てくるヤツの!
【お客】『愛の沐浴』よ!
【DJ】そうそうその、なんとかいうドラマ。はやりましたね~なつかしいな~。たまに観てましたよ!最終回、みんな観てるのにたしか俺だけドラクエしてたな~。
【お客】わたしから電話がかかってくるなんて、驚いたでしょう。三流ディスクジョッキーが会話していい相手じゃないものねぇ。驚いたわよね?
【DJ】ええ、そうでもない!なんつってねハハハ。驚きましたよ多少は。
【お客】失礼ね全く…。わたしほどのビッグスターがこんなチンケな薄汚いラジオ番組にわざわざ電話してやってるっていうのに。
【DJ】こんなチンケな薄汚いラジオ番組で悪かった。
【お客】さっきから何よ、その口調!ノーギャラで出演して上げてるのに!本来なら一分間五万円はもらってるわよ!?
【DJ】そりゃどうも。でも出演依頼してませんよ。
【お客】きーっ!どこまで憎ったらしいの!ホント、無知って怖いわね。わたしが本気を出したら、アンタはおろか、アンタの番組プロデューサーも路頭に迷うハメになるわよ。そのクビがつながってるのは、わたしが優しいおかげ。わたしってば、信じられないくらい甘いわ~。この電話の相手が大泉チン子あたりだったら、アンタとっくに業界から葬られてるわよ。わたしの御慈悲に感謝することね。
【DJ】へへーっありがたき幸せ~。で、何の相談ですか?
【お客】くっ…!まあいいわ。わたし、芸能界を引退したじゃない?
【DJ】えっそうなんですか。最近テレビで見ないな~とは思ってましたけど。
【お客】それも知らないの!?引退会見の時なんて、報道陣が殺到しちゃって大変だったんだから。一般常識よ、一般常識。芸能界の末席を汚す者として知っておきなさい!
【DJ】はい。オヒメさんの引退、とても残念です。ファンでしたから。
【お客】ウソ、急に素直になっちゃって。だまされないわよ。
【DJ】いえ、ちょっとオイタが過ぎました。憧れの人から突然かかってきた電話で、気が動転してしまいました。数々のご無礼、お許し下さい。
【お客】なに、なにちょっと。気持ち悪いわね。ディレクターか誰かが謝るよう指示してるんじゃないの?
【DJ】いえ、この番組はディレクター居ません。貧乏番組・C級ラジオ局でございます…。そんな場所へ電話を下さり、感謝の念に堪えません。宜しければ、今度スタジオにも遊びにいらして下さい。貧乏番組ですので薄謝しかお渡し出来ませんが…それでも宜しければ、ぜひ!それと、あの、その時…、サインおねだりしちゃってもいいですかね?本当にファンなんですよ。彫りの深いおキレイな顔立ちをしてらっしゃるし、スタイルグンバツだし、あの、その、ぶっちゃけ超タイプ!
【お客】ほんと、気味が悪いほどの変わりようね…。でもまあ、いいわ。
【DJ】どうぞお話し下さい。
【お客】ありがとうライオン。そう、それでね、わたし、芸能界を引退したじゃない?そりゃもうたくさんの報道陣がわたしを追い回したわ。百人、いえ、千人は居たでしょうね。人気絶頂だったし、ううんちがう、まだまだ伸び盛りで、いずれはハリウッドナンバーワン女優とまで目されてたじゃない?
【DJ】そうですね。その通りです。ラジオの前のリスナーみんながそう思ってますよ。
【お客】それが突然、引退するなんて言い出すから、世間のみんなもビックリしちゃったでしょうね。ごめんなさい、ファンのみなさん。でもね、疲れたのよ…芸能生活が。
【DJ】わかります。わかります。僕のように無能で強欲でバカな四流ラジオDJとは比べ物にならないくらいお忙しかった事でしょう。
【お客】あら、自分を悪く言うのは良くないわ。あなた、立派なディスクジョッキーじゃない?口もうまいし発音もいいし、一流だと思うわよ。
【DJ】めっそうもない!オヒメ様からそんな言葉をちょうだいするなんて、バチが当たります!もったいなさすぎてバチが当たります!おお、神よ許したまえ!この、身に余る幸福を獲得してしまった子羊を…!
【お客】おおげさねぇ。誇っていいのよ。わたしが保証するわ。わたしが気に入る人間って、たいていは必ず成功する事が多いんだから。
【DJ】ん…?あ、いえ、お誉めに与り光栄でございます。心より感謝致します。…ハッ!わたしの詰まらぬ弁舌で時間を割いている場合ではありません!リスナーが聞きたがっているのはオヒメ様のお声、お話…。そしてなにより、不肖ライオンの耳がオヒメ様の魅惑的なスウィートヴォイスを感じたがっているのであります!ささどうぞ、どうぞお話になって!
【お客】ふふ、ホントに口の上手な事。…あれ、どこまで話したかしら?そうそう、疲れたの、芸能生活に。売れっ子だったから、どこへ行ってもアホ記者どもがつけ回してくる。プライバシーなんてお構いなし、私生活にまで首を突っ込んでくるパパラッチども。あげくわたしの事をバッシングする…。なによわたしの性格が悪いって、根も葉も無いウワサ流しやがって。身の程をわきまえない失礼千万な高飛車オンナだとコラぁ?こちとら職業柄それなりにセレブ気取らなきゃいけねんだよ!そもそもおまえらとは格が違うからお高く見えるんだよこの愚民がぁ!……ごめんね、グチになっちゃったね…。ね。聞いてるの、ライオン?
【DJ】え、あ、はい。聞いておりますとも。ますともますともアイマストリッスン。
【お客】それでね…。わたし、芸能界を引退する事にしたの。疲れたの。ファンのみんなには悪いと思ったよ、でも、限界だった。
【DJ】あ、お話の途中で悪いんスけどCMいいスか?
【お客】えっ、ちょっと…!


(CM)
 某芸能人御用達!X線カメラ!!
 混雑した車内・大都会の雑踏…。そんな中、微弱なX線を放出するこのカメラ。邪魔な繊維・人間としての理性をむしり取ってしまえ。産まれたままの姿を捉えるんだ。
 一糸纏わぬセレブの姿をキャッチ。X線カメラ!透けます。



【DJ】イェーイェーイェー!BNSラジオ、DJライオンがお送りする電波電話部だよ。今日はスペシャルゲストになななんと!女優の崎田オヒメさんをお迎えしてるぜ~。イエ~イ。
【お客】ちょっと!これは電話。ゲストとして出演してるわけじゃないわよ!
【DJ】失敬失敬ケーシー高峯。ジョークですよ、ジョーク!それに、僕なりに気を遣ったんですよ。一般リスナーとして扱われちゃあ、プライドに障るんじゃねえかと思いましてね。
【お客】何よソレ…。それに、急にCM入るなんてヒドくない!?これからわたしがせっかく大事な話をしようとしてたのに、なによそれは!
【DJ】コマーシャル流さないとこの番組は運営していけないんでね。
【お客】だからって!わたしはオヒメよ!
【DJ】オヒメさんから給料いただいてるわけじゃないんでね。
【お客】アンタさっきと全然態度ちがうじゃない!?
【DJ】あ、そうか。何があったんです?一体、何が!?
【お客】そんな芝居がかってもムダよ!アンタ、わたしの事ナメてるでしょ?
【DJ】そりゃあ…ナメたいですが…。会っていただけますか?今度会いましょうよ。俺、あの、…こんな事ラジオで言っていいのかな、、、オヒメさんの事が大好きなんです!愛してます!結婚しましょう!!
【お客】え…何よ突然。頭おかしいんじゃないの…?
【DJ】本気です。
【お客】ヤダ…ウソ…。
【DJ】愛してます。オヒメ様。
【お客】もう…そんな事、こんな場所で言うもんじゃないわ…。
【DJ】今度会って下さい。改めて、俺の気持ちを告白します。ですから、今日の所は、なぜお電話を下さったのか!?いかがなされたのか!?それをこの哀れな下僕のためにお話し下さい!
【お客】もう…。しょうがない子ね…。
【DJ】オヒメ様がブラウン管に登場しなくなったその日から、俺のチンコ…コロ、チン心、ファン心は萎えっぱなしです。なぜ!なぜなのですかWHY!?俺らファンを見捨てて、なぜアナタとYOUかぐや姫は月世界へ帰って行ってしまわれたのDEATHか!?そしてなぜ、今になってなぜ、電波電話部だぜ、ご光臨されたのDEAD!?
【お客】うん…。いろいろあってね…。長くなるけど、聞いてくれる?
【DJ】もちろん。ぜひお話し下さい。リスナーからの反響がすごいんですよ。ファックス用紙代を弁償していただきたいくらいファックス届いてます。「オヒメ様おひさしうございます。オヒメ命」とか「ライオン殺すぞコラ」とか届いてますよ!みんな聞きたがってる!今、すげぇ聴取率ですよきっと。局としては今の状態を維持したい。それもこれもオヒメ様のおかげ、逃してなるものか。オヒメ様に話していただくために、俺は気色悪いオベンチャラ言ってゴキゲン取ってるんですからぁ。
【お客】え?
【DJ】いや…、あの、ゴキゲンですよ、みなさん。リスナーのみなさんゴキゲンです。気色悪いオベンチャラ使うほどのファンも居ますよ。って事です。はい、お話し下さい。
【お客】なんだか腑に落ちないけど…。話すわ。注目され続けるのに疲れて、わたしは芸能界を辞めた。辞めたら、注目されなくなって、疲れることもなくなった。でも、この虚無感は何?
【DJ】なんでしょ。燃え尽き症候群っていうやつですか?学名、ジョーヤブキシンドローム。
【お客】むつかしい学術用語はわからないけど、わたしはこう、分析するわ。わたし、根っからのスーパースターじゃない?目立たないと、わたし本人は良くても、わたしのDNAが黙っちゃいないのね。世の中の熱視線を再び浴びたいって、身体が欲しちゃうのよ…。困るわ…。
【DJ】ふむふむ。スターで居る事に疲れたんだけど、疲れが取れたらスターに戻りたくなった、と。
【お客】そう、その通りよ。こんなのってワガママかしら?
【DJ】いえいええ。大スターゆえの悩みでしょうね。それはそうと、またCM行っていいスか?
【お客】……。
【DJ】あの?
【お客】ムッ、カァーーーッ!!
【DJ】ひぃっ!?
【お客】いーかげん気付くわよ!ナメやがって!消えた芸能人だと思って、軽く扱いやがって!!ドアホ!見ておきなさい、かならずまた、目立って見せるから!バカ!(ガチャッ)
【DJ】うわ、キレられて切られちゃった…。


(CM)
【男A】アチャッ!ピチャ!喉乾いたー。
【男B】ゴキュッ、ゴキュッ、プハァー!
【男A】おい、リー。なーに飲んでんだよ俺にもくれよ。
【男B】半井桃水。暑さを蒸発させる爽やかな桃味。あげない。
 清涼飲料水ナカライトウスイ、新発売。チャンとリーから。



【DJ】さ、次のお電話につなぎましょう。もしもし?
【お客】おい!落ち目の芸能人なんて出してもおもしろくねえよ!俺が今から、BNSラジオをジャックする!
【DJ】それは威勢がいいね。電話でどうやってジャックするんだ?俺が電話を切ったら、おまえの声なんて電波に乗らないぜ。
【お客】黙れ!今から電話を通してライヴするからな!よく聴いておけ、ありがたく思えよ。俺様の新曲が、タダで、いち早く聴けるということを!
【DJ】おいおい、誰も頼んでないよ。アンタの歌なんて聴きたくないよ。
【お客】タダだぞ!タダで、名曲の誕生、つまり伝説だ!立ち会えるんだぞ!不滅の名曲初お披露目という、歴史的瞬間にな!
【DJ】おまえがおまえの作品にどれだけ精力を傾けたかは知らない。だがきさまのために貴重な時間を割くわけにゃいかねえ。みんなそんなヒマじゃないんだ。山の物とも海の物とも知れないモノに付き合う余裕はないね。
【お客】俺の作品にハズレはない!ライオン、おまえだって絶対涙を流すはずだ。なぜなら俺は人類史上最高の、空前絶後の天才アーティストだからなぁ!俺よりエライやつなんていない!俺を見ろ!俺の作品以外聴くな!あああアー!
【DJ】たとえば、そうだな…。一円のCDが売ってたとする。演歌のね。安い、もうアホみたいに安い。店側も赤字覚悟の投げ売りセールさ。でも、それを買おうと思うか?
【お客】思わないね!俺の作品しか聴かない!みんな俺の作品だけ聴けばいいんだ!
【DJ】だろ?時間のムダさ。それと同じだ。したい事をしたいよな。この番組だって、時間が限られてる。じゃあな。
【お客】おい、ちょっ…
(ブツン)
【DJ】おいっちょ?カブか。よし、番組に戻ろう。現在BNSラジオでは電波電話部を放送中だよ。はぁいもしもし。こちらBNSラジオ、司会のDJライオンだよ。
【お客】ちょっとヤラシイ質問をしても大丈夫ですか?
【DJ】ん…。まあ。ん~、放送禁止用語を直接言わなきゃギリギリOKかな。おまん…ホニャララとかな。わかるだろ?
【お客】オマンコ?
【DJ】バッカ!フォローのしようがねえよ!引っ込め、またあとで電話して来い!
【お客】え、もしもし…!
(ブツッ)
【DJ】アーイェー。生放送に放送事故は付き物。ライオンの電波電話部オンエア中!問題ない、問題ない…。スポンサーのみなさん、問題ないよ!コマーシャル──


(CM)
 筋肉増強剤・マッスルトリートメント!
 飲むだけで筋肉むっきむき!過酷なトレーニングは一切不要。一日一粒飲むだけでマッチョな肉体があなたの物に!マッスルトリートメント!
 (ピンポーン)有効期限二日。効果が切れると死にますので用法用量タイミングを正しく守ってお使い下さい。



【DJ】放送事故も、なんのその!BNSの歴史にまた新たな伝説が加わったぜ、こちらは4649ギガヘルツ・DJライオン電波電話部。もしもし、あなたの電話を取ってますよ?
【お客】あ…。さっき電話した嘉藤ですけど…。
【DJ】早いよ…!
【お客】あの、さっき、何がまずかったんですか?
【DJ】放送禁止用語は言うんじゃねえよ…!今度言ったら、ただじゃすまさねえぞ。
【お客】そうなんですか。すみません。でも俺、おまん(ピーッ)止用語だなんて知らなかった。
【DJ】おま、バカ…!俺がとっさにビープ音を入れなかったら、今ごろ大変だったよ!発言に気をつけろっての!
【お客】ホント、すみません…。もう言いません…。
【DJ】やれやれ…。「おまん汁」だったら,「あっおいしいよね。おまんじゅう」とかさ、「まんげ」だったらそのあとに「きょう」をつけて「万華鏡がどうした?」なんてさ、話を継げたけど、あんなストレートに来られるとなぁ。
【お客】御マンぢるだったらいいんですか。
【DJ】バカヤロウ!はっきり発音しすぎなんだよ…!えー、ゴホン!あ~。ゴホンゲフッゴホン!…リスナーのみんな、彼は我慢…する、その、質問、をまんじる…質問を甘んじるらしいです。甘んじて質問を辞退するらしいです!コマーシャル──
(おいAD!こいつの電話は着信拒否っとけ!)


(CM)
 ブイーーーーーーーン。ゾリッゾリッ。
 ブイーーーーーーーン。シャコシャコシャコシャコ。
 ブイーーーーーーーン。ジョリジョリジョリ。
 ブイーーーーーーーン。ミミ、ミミミミミ。
 歯磨きとヒゲ剃り、どちらにも使える電気カミソリブラシ「エレクトリックコケシ」、デビュー。



【DJ】好きな花言葉は毒ダミ!DJライオンがお送りする電波電話部だよ。4649ギガヘルツ、最低のラジオ局BNSからお届け中。どんどん電話かかってきてるぜ、もしもし?
【お客】突然だけどね、DJライオンね、「ね」が多いね。
【DJ】ん?ことばの語尾に「ね」をつけまくってるって?
【お客】そんなにね、「ね」をつけてね、何がね、面白いのかね。小学校でね、教えるね、文節のね、切れ目をね、探すためのね、作業かね、つってんのね。
【DJ】そんなに多いかね。ああ、使ってるね。
【お客】でもね、別にね、それをね、報告するためにね、電話しただけなのでね、批判とかじゃね、ないのね。俺ね、「ね」好きだしね。「ね」にね、根ざしてるのね。
【DJ】そう。死ね。(ガチャッ)はい、引き続きドンドン電話して来て下さい、人畜無害のリスナーども!
【お客】もしもし。
【DJ】ビ、ビックリしたぁ!呼び出し音のひとつくらい鳴らせ!
【お客】ジリリン。
【DJ】くちで言ってるだけじゃねぇか!ボケは俺に任せとけっての、このクソボケ野郎ー!
【お客】最近、彼氏との関係がギクシャクしてて…。それで、相談に乗ってほしいの。
【DJ】いつもあなたに愛のムチを。こちらBNSラジオ電波電話部だよ。何でも話してごらん。まあ、聴くだけ聴いて最後には「そんな男別れちゃえよ」って答えると思うけどさ。とりあえず聴くだけ聴くから話すだけ話してごらん。
【お客】忍者の彼を持つと苦労するわ。
【DJ】ほう…。興味深いね。なんだい、いいじゃないか。忍者なんて。レアだぜ、レア。
【お客】うん。外国人からの評判はいいよ。でもさ、何かと言えばすぐ転がるし。
【DJ】どういう事?忍者のくせにバランス感覚が無いのか。それとも前方回転受け身?
【お客】ううん、ちがうの。デートの時とかさ、一緒に町を歩いてたりするといきなりものすごい勢いで横っ飛びして転がったりするの。
【DJ】それはエキセントリックですね。
【お客】で、なぜ転がったのか訊くと「殺気を感じた」ですって。もーやんなっちゃう!
【DJ】まあ、忍者だからね。
【お客】でもさでもさでもさ。はずかしいじゃない?別に何でも無いのに、さも命からがら間一髪みたいな表情でひたいの冷や汗を拭いながら「飛ばなかったら、危なかった」とか言うんだから。一緒に歩く身にもなってよ!
【DJ】(深刻な口調で)そういう悠長な事を言ってるやつが、二十一世紀戦国日本では真っ先に死ぬんだよ。
【お客】そ、そう?
【DJ】もしも彼氏の言う通り、ホントに殺気だったとしたら?転がらなかったら、スナイパーに狙撃されて死んでたかも知れない。あなたは自分の彼氏の能力を過小評価している。だって忍者なんだよ?一般人より勘は鋭いさ。
【お客】う、うん…。
【DJ】よく聴けラジオネームはなもげら三世よ。
【お客】そんなラジ…
【DJ】(さえぎるように)はなもげら三世、彼氏をもっと信じろ。そいつ、必死なんだろ?冗談で転がってるんじゃないんだろ?
【お客】うん。わたしにはバカバカしく思えるんだけど、当の本人はマジみたい。それから言っとくけど、わたしはそんなラジ…
【DJ】(またもさえぎって)はなもげら三世、これからは彼氏がそういう行動を取ったら「死ななくて良かったね」と言ってやるんだ。
【お客】だから!わたしはそんなラ…!
【DJ】わかったね、はなもげら三世。これ以上ない無表情で「死ななくて良かったね」と言ってあげるのがコツだ。
【お客】ちょっと!わかったもなにも、わたしはそんな変な…
【DJ】わかったね?
【お客】わかりました…。だけど!これだけはハッキリさせ…
【DJ】わかってくれて良かった♪ でもまぁ、何はともあれ「そんな男別れちゃえよ」って事で。じゃあね☆ いったんCMでーす。


(CM)
 (SE:流し台の音。水を流す音や、プラスチック製コップが陶器に当たる音。歯ブラシを使う音・うがいの音に続き、水を吐き出す音)
【アイドル風の声】 ちょ~っとぉ~?今何したの!?プンプンッ!ダメだよもったいにゃい。歯磨きする時は、これなのら~。サンリスター・「いちごはみがきこ」!歯を磨いたあと、そのまま食べれるよ☆ これで地球サンにも優しいのら!
 ガラガラガラガラ…………。ゴキュ。



【DJ】次の人しゃべりな。電波電話部DJライオンがお相手するよ。
【お客】今度さ、友だちがさ、結婚する事にさ、なったの。
【DJ】今度は「さ」か…。そりゃおめでとうさー。
【お客】でさ、いくらかさ、お金をさ、持って行くってさ、聞いたけどさ、ホントなの?
【DJ】ん?ご祝儀の事?ホントだよ。というか俺に聞くなよ…。
【お客】いくらぐらいさ、包んでいけばいいの?
【DJ】そうだなぁ…。友だち同士だろ、「気持ち」を包んでいけばいいんじゃねえのか。いくら贈賄しようとややこしい事にはならねえよ。
【お客】ゾウY…?ややこしくなる場合もあるの?
【DJ】会社の同僚が結婚する時は難しいね。地位が高ければそれなりに高額のご祝儀が必要だ。部下を祝う時は、メンツの問題になる、奮発してやらにゃ。逆に、多すぎると上司に「生意気だ」と思われる。たとえばさ、営業部長の披露宴か何かで、社長が十万円包んできたとする。「少ないが、取って置いてくれたまえ」ってな。そこへ、単なるOLのアンタが三十万円ドンと差し出して「少ないけど取っといてよ」なんて言ったらコリャ生意気だ。社長の体面丸つぶれ。
【お客】へぇ~そんな事があるんだぁ。むつかしいなぁ。でもさ、そんなさ、接待みたいな結婚式じゃないの。中学の時のさ、同級生からさ、お誘いが来たの。
【DJ】失礼だけど、アンタいくつ?
【お客】二十九よ。
【DJ】二十九歳?よく今まで招かれなかったね!
【お客】え、おかしい?おかしいの?
【DJ】おかしいのおかしくないのって…。それくらいの年なら結婚ラッシュだろ。友だち少ないの?
【お客】う~ん…。うん。でもさ、今度結婚する“のっちょん”はさ、わたしたちの中ではさ、一番早く結婚するよ?
【DJ】どんなブスグループだよ!?あっ、失礼…。まあさ、「気持ち」を包んでいけよ。金額じゃないよ。あと、アンタはこれから少し遅い結婚ラッシュを迎えるだろう。毎回新しいドレスを用意しなきゃいけねえから、今から貯蓄しておくんだな。
【お客】ええっそうなの~?ヤ~ダ~。じゃあさぁ、あんまりゴシューギ?は張り切らなくてもさ、いいよね。
【DJ】おう。ハリキリ過ぎてハラキリしちゃあ意味ねえからな。
【お客】意味わかんなーい。キモーイ。
【DJ】…それでいくら包んでいくんだ?
【お客】わたしさ、のっちょんの事さ、正直さ、あんまり好きじゃないんだよね~。うーん、持って行かない!
【DJ】そりゃマズいだろ。手ぶらは恥ずかしいよ。手ブラ、つまり手でブラジャーを形作るのと同じくらいに恥ずかしいよ。五円玉入れといてやれよ。ご縁がありますようにってさ。
【お客】キショーイ。ライオンってもしかしてオヤジぃ?
【DJ】…こちらはBNSラジオ。4649ギガヘルツで元気に放送中だよ…。
【お客】じゃあ、ライオンを信じて五円玉にしよっと!いいんだよね?ねえ、いいんだよね!?
【DJ】おう、バッチリだ。でも五円玉を財布から出して受付に渡すなんて無粋はするなよブス。「のし袋」っていう封筒がコンビニとか文房具屋に売ってるから、それに五円玉を入れてさ。封筒の真ん中に「香典」って書けば問題無しだ。
【お客】コウデン…?
【DJ】カオリって字、わかるか?それが「香」だ。それからデンは辞典の「典」だ。
【お客】わかるようなわからないような…。
【DJ】じゃあ、ゴブツゼンにしとけ。ゴは丁寧の「御」、「御三家」とかのゴ。わからなければひらがなでもいい。ブツは…「ホトケ」様だ。カタカナで「イム」ね。ゼンはまえ、「前」ね。
【お客】ご・仏・前…。ありがとうライオン。ライオンは物知りね!
【DJ】どういたしまして。何か困った事があったら何でも聞いて。何でも知ってるから。おまえの学歴が低い事も、俺は知っている…。おまえが二十九歳ということも…。
【お客】え、え、何で知ってるの?
【DJ】そしておまえがカワイイという事も。
【お客】ヤダー♪ ライオンの物知りぃ☆
【DJ】調子に乗んな失せろドブス。


(CM)
【男A】あっちぃ~。ムシャクシャする。また誰か殺りたいなぁ~。
【男B】ゴキュッ、ゴキュッ、プハァー!
【男A】おい、シロウ。なーに飲んでんだよ俺にもくれよ。
【男B】幸徳秋水。刀の切れ味と確かな麦味。あげない。
 発泡酒コウトクシュウスイ、新発売。チャンとシロウから。



【DJ】次の人、どうぞ。BNSラジオ・DJライオン電波電話部。どんなお悩み・相談もお受けいたします。
【お客】あの…さっきは失礼しました。あの、さきほどお電話した嘉藤ですけど…。
【DJ】またおまえか!(おいAD、なんで着信拒否にしなかった!?)
【お客】友だちの携帯を借りて電話してます。
【DJ】なんだよおめえはよ!切るよ、もう切るよーサイナラー。
【お客】待って下さい!安全日と危険日について教えてほしいんです!
【DJ】セーフティーデイとデンジャラスデイだぁ?それがどうした。
【お客】安全日とか危険日とか耳にするんですけど、アレって何ですか。
【DJ】そのくらいの質問だったら大丈夫だ。ったく、最初からその質問だけ口にしてりゃあ良かった物を…。おい、ただし、おまえはもう何もしゃべるなよ!返事は「はい」これのみだ。わかったな?
【お客】はい。
【DJ】よぅし、イイコだ…。それじゃあ説明してやろう。オギノ式っていう避妊法があってね──荻野久作っていう産婦人科医が唱えた学説に基づいてるんだけど──月経ってあるじゃないか。いわゆる生理、アノ日ね。その、月経次回予定日から逆算して十二日前から十六日前には排卵が起きません、っていうね。そこに、大人の事情で三たす一日加えて、十一日前から十九日前の九日間は、出しちゃっても妊娠しませんよっていう…、ね。なんとなくわかる?
【お客】よくわかりません。
【DJ】返事は「はい」だけだ!つまりまあ、その…。かいつまんで言ってしまえば──月経は、人にもよるけど,二十三日から三十五日周期で来るんだわ、「月のモノ」と言われる由縁だわな──その、月経、アンネちゃんが来た日の四日後から二十四日後の間なら、絶対安全って事だよ。それが安全日。それ以外が危険日。わかったかな?
【お客】よくわかりません。
【DJ】返事は「はい」だけだ!つまり、危険日っていうのは妊娠しやすい日なのさ。
【お客】何が危険なんですか。おめでたいことじゃないですか。
【DJ】彼女を作って、危険日に会え。危険の意味がわかる。
【お客】女性が暴力的になる日なんですか?
【DJ】ああもう!そう、そうだよ!貞淑なお嬢様も、マットの上では女子プロレスラーのように凶暴になるってこった。じゃあな童貞!


(CM)
 新発売!アシッドコークコントラセプション!
 強酸でSONを殺菌!洗浄用コーラ!新発明・甘味料デスアシッドによりコンクリートをも溶かす!
 アシッドコークコントラセプション!胃潰瘍の方もどうぞ。



【DJ】もしもし、こちらはBNSラジオですよ。このDJライオンに何か質問がおありか?
【お客】おいライオン。さっき避妊方法を教えてたな。きさまにはキリスト様から天罰が下るぞ!神と神の子と精霊の御名において…。アーメン。
【DJ】アンタ誰?Theアーメン教団の人?
【お客】Theとはなんだ、ザとは!わたしは…いいかよく聞け。聖四丁目教会神父並びに堕胎反対会会長及び避妊否認協会総裁の内村だ。
【DJ】長ったらしい肩書きだな。どれか懲戒免職にしたい。
【お客】いいかライオン。避妊などという悪行を布教して得々としていると、最後の審判の日に貴様はゲヘナ行きだ。確実にな!
【DJ】なにナニなんなの。ゲヘナって何さ、おっかない。何で発情男子の質問に答えただけで地獄行き決定になっちゃうの?わけわかんないよ~。
【お客】おまえの教えた避妊という行為。自然な受胎出産を拒む、自然に反する行為・神に背く行為!子孫繁栄の目的以外で、快楽のために性交渉をしてはならぬ。避妊など、持っての他だ。
【DJ】旧約聖書にオナンて男が居たじゃん?まかず、流したとか言う。あいつ、最後にはどうなったっけ。
【お客】神に殺された!神の意志に適わなかったのだ!ライオン、貴様も神に殺されよう…。
【DJ】ああ、おそろしい!神よお許し下さい。殺すのだけは…死にたくない!
【お客】己の非業に気付き、改心したか。
【DJ】はいっ。神父さま、助けて下さい!僕は、僕はどうすれば許されますか。救われますかっ。
【神父】悔い改めるのです…。悔い改めよ、汝の罪を。神の前に全てを告白し、キリストを受け容れよ。神の御業を信じるのだ…。
【DJ】う~む、そりゃムリだな。ゴメン。
【お客】ペテン師め…。ウワサ通りのウソツキだ、信じなくて良かった。汝、偽証するなかれ!
【DJ】信じる者は救われる…じゃあアンタは救われないな!でさ、偽証は別としてさ、俺は何の罪を犯したんだ?
【お客】避妊を幇助した。これは立派な罪だ。天使をそそのかし堕落させ、堕天使にしてしまうようなものだ。
【DJ】避妊を幇助?天使が堕天使に?ハ!
【お客】何がおかしい…?
【DJ】アイツは堕天使みたいなモンだよ。それで矯正してやったのさ。自然なセックスを教えてやったのさ。つまり、危険日と安全日をアベコベに教えてやった。
【お客】な…。
【DJ】神父さま。彼は自然なセックスをし、彼女を妊娠させ、経済的に自立できないまま父親となるでしょう。枯れた草だけを資本にして家庭という小屋を築くでしょう。未熟な手で草を、ヘトヘトになって拾ってきて積み上げる毎日。ヘトヘトになってるのに、報われず、家屋はボロボロ、赤ん坊の涙ポロポロ、嫁の涙ほろほろ。暗いトンネルは長く、その先に光は見えない、ずっと。こういう苦しい生活、そこに幸せはあるんですか。
【お客】貴様はなんというゲスなんだ…!
【DJ】何とでも言うがいい。俺は避妊を防いだんだ。避避妊だよ。神の意志に適ってるんじゃねーんですか?え、どうなんですか?
【お客】結果がどうあれ、悪意を以て他人を陥れる者に神の祝福は授けられない。
【DJ】悪意はないですよ。陥れてないし。冗談ですよ、そういうラジオだからね。懺悔室と違って欺瞞と頽廃に満ちてるんです。
【お客】減らず口を叩くな!
【DJ】イェーイェーイェー!神父様、妙に落ち着かないご様子ですが、どうなさった。避妊をさせないとどうなるか、シミュレーションの結果を聞いてショックですか。
【お客】清純なキリスト教徒は結婚してから初夜を迎える。貴様の言ったような間違いは起きない。
【DJ】すみません俺無知なんですよ。アダムとイヴは結婚しましたっけ?登記所に婚約届けを出しに行きましたか?実印は押しました?あ、旧約聖書はお読みにならない?
【お客】減らず口を叩くなと言っている!真実の愛を有したキリスト教徒は、性欲に任せて性交などする事はない、と言っているのだ!
【DJ】真実の愛ねえ。愛しあっていればHしたくなるのは当然でしょう。愛って、そういう物だもの。動物なら誰もが持っている固有の本能。それを、人間様専用の語としてあつらえた特注品でしょ。
【お客】ちがう…。愛とは、もっと大きな物だ。
【DJ】愛って何?愛ってなんだよ。
【お客】愛とは、神の愛…。
【DJ】漠然としてるね!補足してやろうか?本能的な性欲に支配されない愛、それが真実の愛なんだろ。そう言いたいんだろアンタは。
【お客】そう。そうだ。真実の愛とは、性欲の奴隷ではない。
【DJ】じゃあ、同性同士の恋愛はこれ以上ないほどに純度の高い真実の愛だね。99.9999パーセント、薬剤用語で言う所のシックスナインだ。
【お客】教会は同性結婚など認めない。自然な形のカップルではないからだ。男女のカップルこそ、本来の形、有り得べき番いだ。
【DJ】アンタの意見は矛盾するんだよ。いや、アンタんとこの宗教が、現代の風潮と相容れないんだよ。ゲイやレズビアンこそ、最も洗練された人類じゃないの?あれこそ真実の愛だぜ。シックスナインだ。
【お客】けがらわしい。何がシックスナインだ。そんな汚れた言葉をラジオで声高に話していいのかね?
【DJ】何がけがらわしいだコノヤロウ!99.9999の事を九が六つ並んだ状態、シックスナインて言うんだよ!七が三つ並んだらスリーセヴンと称えるだろうが。手元の辞書を引いてやるよ。「シックスナイン[和製英語]九九.九九九九%。ほとんど完全に近い形容」だとよ!てめえの頭の中こそ、けがれた妄想にまみれた脳ミソが生ゴミみたくドロドロ臭ってるんじゃねえのか!?
【お客】(ブツン)
【DJ】ふん、図星かよ。


(CM)
 本日のBNSラジオ、午後の放送予定は…。
 十二時台は、お昼のニュースのあと、討論番組「昼間で生ラジオ」。この人この食卓、ゲストはリサイクルショップ店長とBNS添田局長。それから海外映画情報・町角レポートの順で放送する予定です。
 十三時から夕方まではDJケムリあふたぬ~ん。本日はよいこのための起業術を特集。
 全部通して聴くような暇人はいないと思いますが、各番組、お楽しみに!



【DJ】こちらBNSラジオ・電波電話部。どうした事件か。
【お客】ライオンくんは恋人いるかね?
【DJ】唐突だね。新婚一年目、立派な既婚者ですよ。
【お客】楽しいかね。楽しいだろう、まだ。
【DJ】まだってどういう事?楽しくなくなるのかい。
【お客】若いねえ…。女に対する男の感情、それは萎えていくもの。ちょうど男性器と似ているね。
【DJ】ちょっとちょっと、それ以上言うと放送できなくなるぜ。生なんだから…取り返しのつかない事になる。最悪の事態に陥った場合、しっかり責任は取ってもらうぞ。
【お客】生か…。生はイイ。それこそ動物本来の愛の形だ。コンドーム着用などは自然に背反する行為。神への冒涜・反逆行為だ。フリーセックス・避妊否定こそが動物のまっとうな姿、あるべき姿だよ。
【DJ】いい加減にしろよ!それ以上続けて、もし番組打ち切りなんて事になったら、法外な賠償請求書をプレゼントしてやるからな!郵便ポストを掃除して待ってろ。
【お客】オンナは落とすまでが楽しいんだ。手に入ってしまえば、途端に重たくなる。ライオンくん、君もそのうち背中の荷が重く感じていく事だろう、女房の体重とともにね。
【DJ】そんな事はない。俺は妻を愛してる。これからもずっとな。
【お客】愛してる、か。それは正しいかも知れない。が、その愛の熱が冷めていくのはまぎれもない事実なのだ。疑う余地の無い、受け容れるしかない、定理なのだ。
【DJ】オッサンよ、アンタがそうだからって、さも「みんなそうです」みたいに言うのやめてくんない?迷惑なんだよ。アンタは結婚に失敗した──化け物のデカいケツに敷かれてヒィヒィ言ってる、それで、他人の幸福がねたましくてそう言うんだ。
【お客】男が浮気するのは動物的本能だ。性欲がオンナを手に入れようとする、目的のオンナを征服したら次のオンナへ領地を広げたくなる。
【DJ】何が言いたいんだ。歴史の授業になっちゃったのか?
【お客】つまり、予測し得ない厄災に備えるための論理だよ。黒人をジェノサイドする新種の殺人ウイルスが発生したとする。その時、地球上の人類全てが黒人だったらどうなるね?畢竟ずるに人類は絶滅する。精子の数がむやみに多いのはなぜか知ってるかね。様々な可能性を子孫に残すためだ。確率を増やすため、色々な種類の子孫を残すためだ。人それぞれ異性に対しての趣味嗜好が異なるのは?なぜ近親相姦は禁じられる?全て、いろんな人間を産むためだ。君も私も、どいつもこいつも同じ遺伝子だったら、新しい発明は生まれない。男がいろんな女にホレるのは防衛的本能だ。種を保存していくための知恵だ。みんながみんな一途に美人に恋していたら、人類はとっくに絶滅している。妥協・浮気があったからこそこうして繁栄しているのだ。
【DJ】アンタの理論から行けば、女性だって浮気症のはずだ。しかし現実には違う。
【お客】わかったものか。君の奥さんだって今ごろ、部屋に若い男を連れ込んでいるかも知れないよ?
【DJ】フン、そんな挑発には乗らないな。オッサン、よく聞きな。永遠に愛しあっている人々はたくさんいるし、アンタのような悲劇を演ずる道化ばかりではない。──結婚は人生の再出発だ。人生の墓場なら、誰も結婚する者はいなくなる。結婚制度は廃止になる。でも、そうはなっていない。万国共通、紀元前からの変わらぬ営みさ。幸せだから、幸福になろうとするから、結婚するんだ。そういうカップルを何組も見てきている。中にはアンタみたいに残念な結末を迎えた夫婦も居たけどね。でも、妻に対して変わらぬ愛情を持ち続ける夫はたくさんいる。現に、ここにもいる。
【お客】新婚だからな、若造。まだ世の中が見えてないんだよ君の青い目は。恋愛、それはちょうど、竹細工模型のようなものだ。おっと…、君の年で言えば、プラモデルと言った方がいいかな。作ってる時は、つまり愛を育んでいる時はワクワクするんだ。そして、完成した時、結婚した時も。しかしな、その末路は一緒、しまいにはジャマになる。動物である以上、神の鎖からは逃げられないんだよ…。人間だって、しょせんは動物だ。進化した猿といっても、神との間にはロケットでは縮められない距離がある…。
【DJ】残念ながら俺は十八の時に動物やめたんだ。神になるって決めたのさ。
【お客】ホッホ、これは威勢が良いねえ。ホッホ。
【DJ】ホッホ・ホッホて、間違った読み方でゴッホを日本に紹介した人かアンタは。
【お客】ホッホッホ…。それじゃあさようなら。
【DJ】なんなんだ!胸くそワリイ。俺のカミさんこのラジオ聴いてるっちゅうねん。…真穂、愛してるよ。あんなシナチクの言う事を真に受けるんじゃないよ。
 おっと時間だ。このあと正午からは「お昼のニュース」をお送りします。それではさようなら(怒)またこの時間にお会いしましょう。ペッ!(ツバをドビッシュー吐きながら)


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