とりぶみ
実験小説の書評&実践
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公開処刑   (2007/08/02)
 テレビの前のみなさん、こんばんは。広大な敷地面積を誇るマサクール・パークから生中継です。実況を務めるのはわたくし鎌田。解説は中世拷問史に詳しい作家の谷口さんにお越し頂いています。谷口さん、よろしくお願いします。
「よろしくお願いします」
 さて。我が国今世紀初となる公開処刑がこれからいよいよ執行されますが、お楽しみの前にまずは公開処刑の歴史と解禁に至るまでの経緯についてお話し下さい。
「はい。江戸時代以前はご存じの通り公開処刑はポピュラーなものでした。まず、市中引き回しの末の打ち首獄門。縛り上げた罪人を馬に乗せて町中をひねもす連れ回し、充分見せしめにしたあと、刀ですっぱり首を斬り落としました。胴体は埋葬し、首は防腐加工の塩漬けにされ、台に載せて見せびらかされました」
 首実検ですね。武士による切腹とはどう違いますか。
「あれは強制自決です。本来は腹を真一文字に割いたのち、刀を翻して心臓目がけて斬り上げるのが一人前の侍の所作です。首を落とす介錯人は、心臓を自ら斬り上げられぬ腕の未熟な者のために存在する、いわばお手伝いさんです。本当は己一人で一連の動作すべてを完遂しなければなりません」
 なるほど。勉強になります。斬首刑のほかにはどんな処刑方法がありましたか。
「江戸時代は切捨御免といって、侍が手続きを踏まずに町人を成敗する権利がありました。これも公開処刑の一種でしょうね。とにかく刀を用いた斬首が盛んでしたが、一部では火刑や磔刑もありました」
 火あぶりの刑と、はりつけの刑ですね。まるで魔女狩りやイエスの受難などの西洋における死刑制度を思い出しますが、日本でも行なっていたのですね。
「伝説の大泥棒・石川五右衛門は釜茹での刑にされたと伝えられています。五右衛門風呂の語源ですね」
 日本国以外の公開処刑はどうでしたか。ギロチンの刑とか。
「海外には残酷な公開処刑がたくさんありました。特にスペイン暗黒時代の宗教裁判が世に名高いですね。異端者には考え得る限りの苦しみを与えてじわじわ殺そう。そういう残酷な手法です。たとえば、巨大な車輪と車輪の間で圧死させる車刑、縛り付けた罪人を溺死させる溺刑、受刑者の各足と二頭の牛をロープにつないで左右に引き合う股裂き刑、などなど…。中世暗黒時代のキリスト教教会は拷問処刑のスペシャリストでした。特にトルケマダ裁判長の発明した数々の拷問器具は有名で、彼は世界中の死刑執行人たちの憧れの的です。それから、中東では観客参加式の石打ち刑が古来より現在まで脈々と受け継がれています」
 それは楽しそうですね。昔ながらの伝統を保護していくのはとても大切な事です。
「この石打ち刑は姦通罪に問われた女性に対して執行されます。顔だけ出して土中に埋め、その顔めがけてみんなでよってたかって死ぬまで石を投げつけるという」
 姦通って言うのは不倫の事ですよね。イスラム文化圏は女性の浮気にとても厳しく、発覚したら厳罰を以て臨むと伺いましたが、本当なのですね。それにしてもいいですねえ、石打ち刑。ゲーム性にあふれていますし、共同作業という事で参加者は一体感を味わえますし、我が国でも好評を博すのではないでしょうか。
「石打ち刑に関しては国民からリクエストが殺到しているようです。実現は時間の問題でしょう」
 とても楽しみですね。
「はい。それでは次に、法律改正の動きについてお話しします。東京時代中期、世界全体の死刑執行数の実に約九割を中華人民共和国が占めていたってご存じですか」
 え。あの中国ですか。社会主義国家だったころの。
「そうです。先進国のほとんどが死刑制度を廃止していたというのも統計には影響しているのでしょうが、なにより中国がそれだけ活発に殺しまくっていたという事です。もともと人口が多いとは言え、圧倒的な死刑回数でした。人口抑圧のために簡単な罪でも重罪としていたそうです。銃殺が主だったようですよ」
 なるほど。そのころの中国を見習って、今の日本の法制度が整えられたのでしょうね。公開処刑が復活してきた背景が段々と見えて参りました。
「我が国でも前世紀あたりから人口が爆発的に増え、住みにくい世の中になってきました。貧富の差が激しくなり、犯罪も増加しました。それにともなって死刑囚の数も激増したのですが、人知れず彼らを葬ってしまうのはもったいないですし、それだけの数の罪人をただ死なせるのも惜しい。そこで、中世以前の公開処刑を一般化し、なおかつエンターテインメント性を盛り込もうではないか──そういう動きがここ十年の間に国会で活発となってきました。自然の趨勢として、昨年ついに法案が可決されました」
 反対の声も大きかったと聞きますが。
「野党からは猛烈な反発がありましたね。しかし世論はあらゆる情報の開示を求めていますから、賛成多数で比較的すんなりと国会を通過しました」
 で、法案成立後初となる公開処刑の執行です。ずばり、見どころはどういった所でしょう。
「何と言っても筆頭に挙げられるのは今回の死刑囚の人気度ですね。名の知られた凶悪犯よりも、国民から死を臨まれていた人物。死んで欲しい人アンケートでは毎年首位を独走、ぶっちぎりの得票数で選ばれたこの…」
 芸能リポーターの支那戸。わたくしの先輩です。
「彼の死は国民の総意ですからね」
 お茶の間のみなさんもテレビの前でその時を今か今かと待っている事でしょう。申し訳ございません、お時間までもうしばらくお待ち下さい。
 支那戸死刑囚の簡単な経歴を一応。支那戸は査丸大学社会学部を卒業したあと我が極西テレビに入社、報道部に配属されます。数々の芸能スキャンダルをスクープして知名度を高めたのち、今から五年前にフリーのジャーナリストとして独立。有名人に対する行きすぎた身辺調査や突撃インタビューが大いに反感を買う中、プライバシー侵害のカドで逮捕・立件されました。
「たしか、一審で死刑宣告を受けたんですよね」
 一発判決でしたね。支那戸は上告しましたがすぐに棄却されました。
「当たり前ですよ。鎌田さん、彼はどんな人物でしたか」
 当時からいけすかない先輩でしたね。キライでした。そりゃあ、報道に関するイロハを伝授してもらったり、ゴハンをおごってもらったり、かわいがってもらいましたが、今から思うと恥ずかしい。いくら無理強いされてのご相伴だったとはいえ、暴君的な支配下に置かれていたとはいえ、もっと勇気を出して交際を断るべきでした。いや本当にお恥ずかしい。
「直属上司の威光を笠に着て鎌田さんを舎弟あつかいしていたのでしょう。逆らえなかったのは当然ですよ。あなたに非は無い」
 そう…そうなんですよ。もし歯向かっていたらわたくしの私生活も盗撮盗聴されていたかも知れませんからね。なんなのでしょうか、ああいう人種は。
「病気ですよビョーキ。田代まさしという伝説の悪人と同じ症状でしょう」
 やっぱりそうでしたか。思った通りだ。おかしいと思ったんですよ、だってあんなに常軌を逸した行動…。百回殺しても足りないくらいです。国民のみなさまが怒るのも無理はございません。
「鎌田さん、それからもうひとつ、大きな見どころがあるんです」
 人気ナンバーワンの支那戸が出演するというだけで注目度は尋常では無いというのに、さらにお楽しみがある、と。それは何ですか。
「処刑方法が直前までは内緒だという事です。一昔前までは、日本国内における死刑は絞首刑・いわゆる首吊りのみでした。しかし法律の改正によりあらゆる死刑が選べるようになりました。記念すべき公開処刑一回目は、どんな方法が採られるのか。マニアならずとも気になるポイントですね」
 処刑方法は誰が決めるのですか。
「基本は被害者や被害者の遺族の希望を優先します。予算的に難しい計画でなければ、どんなに無茶でどんなに残酷な刑であっても申請できます。実行が不可能だったり、特に希望がなかった場合は昔ながらの絞首刑が採用されます。ただ、絞首刑は絵ヅラが汚く、食事時の放送にはあまり向かないため、被害者には極力創意工夫のある処刑企画案を提出するよう裁判所が指導しています」
 この生中継番組は今後毎週放送して行くわけですが、次々に出演者が決定していますよ。処刑の仕方も順に提案されているようです。谷口さん、どんな死刑が人気があるか、わかりますか。
「犯人に家族を殺された人の多くは、同じ目に遭わせて欲しいと提案しますね。アメリカの電気イスや薬物投与・ガス室などの古典的な手法を望む人も少数ながら居ます。変わった所では、餓死・バックドロップ百連発・くすぐって笑い死にさせる・大量の生きたゴキブリを飲ませて腹から食い破らせる、などが提案されています」
 餓死は時間が掛かりそうだから生中継向きではなさそうですね。観察ドキュメンタリーとしてまとめられそう。ところで、支那戸の処刑方法は誰が企画したのですか。
「不特定多数の被害者が居る場合、いくつかの案の中から投票によって決定されます。支那戸はそれこそ全国民から恨まれていますから、特例としてハガキでの公募となったようです。死刑運営委員会に届いたハガキの総数は、なんと百万枚超」
 いかにこのイベントが熱望されていたかが窺えますね。
「中には『死刑は廃止するべきだと思う』なんてイタズラの手紙も含まれていたようですが、ほとんどの方が真剣に考えて送ってきたそうです。委員会の人たちも感心していましたよ。没となったアイデアでも、たとえば『宇宙空間に放り出す』なんてものもありました。これ、窒息死より先に、全身の血液が瞬時に沸騰して死ぬと言われています」
 面白そうですねえ。夢があるなあ。
「ふふふ。支那戸に対する実際の処刑方法はどうなるか。今からわくわくしますね」
 あ。いよいよ時間が迫ってきました。視聴者のみなさん、お待たせ致しました。公開処刑執行まで残りわずかです。支那戸死刑囚は今一体どんな気持ちなのでしょうか。現場の及川さん?
「及川です。鎌田さーん。ぼくがどこに立っているか、わかりますかぁ?」
 高い場所のようですね。どこかの屋上ですか。
「そうでーす。ぼくは今、地上二十メートル、第六屠殺場の屋上に立っていまーす」
 第六屠殺場というと、おもに拷問専用の処刑場ですね。となると、ははあ、ピタゴラ装置による最新式の処刑ですか。
「いいえ。残念ながら違うんです。視聴者のみなさんが選んだ処刑法は、コレ。突き落としでーす」
 突き落とし。屋上から突き落とすわけですか。それはまた単純な…。谷口さん、突き落としですって。
「いや、驚きました。わたしもピタゴラ装置式処刑だと予想していました。ピタゴラ式は最もテレビ向きであり、公開処刑の目玉とされていましたから」
 ですよねぇ。遠くの仕掛けが作動し、鉄球や大鎌が囚人の命を狙う。見た目も楽しく華やかですし、スリリングかつエキサイティング。
「それが、まさか突き落としとは。全く予想していませんでした。この単純明快な処刑スタイルは、人類の文化が未発達の頃に行なわれていた原始的な処刑スタイルですよ」
 どうやらわけありですね。何か理由があるのでしょう。
「あ、支那戸が姿を現しました。支那戸が姿を現しました。四名の執行人に付き添われ、手錠姿でこの屋上にやってきました。支那戸さん、今の心境を一言!」
「……」
 意外と元気がありませんね。いつものように悪態をついてくれるかと思いましたが。
「昨日は眠れましたか。遺書は書きましたか。死刑台のエレベーターとか聞きましたか」
「うっさいんだよ!」
 おお、吠えております。支那戸が吠えております。自分の悪行三昧を棚に上げて喚き散らしております。突撃リポートと称し、これまで何度と無く芸能人を困らせてきたのに、いざ自分が取材されると逆上しております。なんて勝手な男でしょう。
「ははあ。わかりましたよ。なぜ刑の執行が突き落としなのかが。一年ほど前、アイドルが投身自殺をしましたよね。あれでしょう」
 あ、なるほど。わたくしにもわかりかけてきました。みなさんもご記憶に新しいかと思いますが、昨年の一月、アイドルの××さんが所属事務所のビルから飛び降り自殺をしました。
「実に嘆かわしい事件でしたな。わたし、あの子のファンだったんですよ」
 忘れられない事件ですが、その時の支那戸の行為も忘れがたい非道でした。まだ遺体も片づけられていないというのに彼はズカズカと事務所に潜入し、スクープを求めて突撃取材を敢行したんです。事務所側も突然の惨事で大混乱しているというのに、マイクを突き付けて「恐縮です! でも、話して下さい。サァ! サァ! しゃべれ!」と。極悪非道ですよ。
「彼には死を悼む気持ちがまるで無い。そして、悲しみに暮れて茫然としている方々の心を容赦なく踏みにじる。鬼畜です」
 支那戸の罪は数多いですが、あの時の取材は特に許せませんよね。おそらく、あの取材に対する不快感が、国民のみなさまに突き落とし刑を選ばせたのでしょう。不肖鎌田、国民のみなさまの義憤を強く感じ、身の引き締まる想いです。突き落とししかございません!
「鎌田さーん」
 はいはい及川さん?
「ぼくは今、落下地点にスタンバイしていまーす。間もなく刑が執行されますよー。」
 いよいよですね。お待たせしました。我が国今世紀初となる公開処刑、執行のお時間です。
(第一カメラ:第六屠殺場を遠距離撮影)
 それでは参りましょう。
 カウントダウン、五秒前。
 よーん。
 さーん。
 にー。
 いーち。
 ゼロ! 執行!
(第一カメラ:屋上から右側の宙に向けて打ち出される人影。空中でもがきながら落下)
(第二カメラ:コンクリートの地面にしこたま叩き付けられる支那戸)
 やりました。お聞きいただけましたか、骨の砕ける衝撃音を。ご覧下さい、この支那戸のぶざまな姿を。
 まだ息はあるようです。全身を複雑骨折させ、鮮血に染まり、ピクピクと痙攣しております。カメラさん、顔を映せますか。あ、こめかみ当たりから頭蓋骨が割れ、灰白色の脳漿が少しハミ出していますね。白目を剥いている。あはははは。あ、及川さんが駆け寄ってきました。
「恐縮です! 支那戸さん、今のお気持ちは?」
「……」
「恐縮です!」
「……」
「うーん。どうやら口を聞くことが出来ないようです」
 及川さん。もしかして口を閉ざしているだけかも知れませんから、蹴ったり殴ったりして無理矢理しゃべらせてもらえます?
「かしこまりました。おいっ!」
「……」
「このっ!」
「あ…ぐ」
「しゃべれ!」
「うっ。うぐっ」
「このっ。クソッ。これでもしゃべらんか!」
「うぅっ、ううぅ…」
「ハァハァ…。ちょっとダメみたいですね。脳みその一部が飛び出しちゃってますから、言語中枢が破壊されてしまっているかも知れません」
 結構です。ありがとうございました。それでは、リプレイを見てみましょう。
 まず、第三カメラからの映像です。突き落とされる直前の支那戸を落下地点からズームアップ。ご覧下さい、このこわばった表情。いかに緊張しているか見て取れますね。
「下から見上げるとそれほど高く感じませんが、いざ屋上に上ると高さに震え上がるものです」
 そうですよね。この程度の高さで、人って死んでしまうんですよねぇ。……あっ。すごい顔。
「これは突き飛ばされた瞬間の表情です。ぶざまですねぇ」
 本当にそうですねぇ。目をカッと見開き、恐怖に顔が歪んでいます。どうして人間は口が開いているとバカそうに見えるのでしょうか、不思議なものです。
(第一カメラが捉えた映像のスローモーション再生)
 ああ、すばらしい画ですね。人が落下しているとはとても思えない、どこか風情すら漂う自由落下運動です。支那戸の身体は地面に向けてグングン加速しているはずですが、スローで見ると一定の速度でふんわり降りているように錯覚しますね。
 しかしこちらをご覧ください。支那戸の目玉の結膜部分に取り付けた小型カメラからの映像です。スローではなく、実際のスピードでどうぞ。
(第四カメラ・支那戸視点からの映像)
 ちょっとゾッとする映像です。グングン迫る地面! カメラが地上めがけて落ちているのではなく、巨大な壁があちらから向かってくるようにも思えます。これは怖いですねぇ。支那戸は目を開けていましたから、この恐怖を実体験したわけです。いいザマです。
(第二カメラが捉えた映像のスローモーション再生)
 そしてこれが第二カメラからのスロー映像、支那戸が地面に叩き付けられる瞬間です。頭から落ちて即死しないよう重心調整のウエイトをつけていたので見事胴体の前面から落ちています。うわー、生々しい。水袋が破裂したかのような血の噴出です。地面とは反対方向、つまり天空に向けてブワッと持ち上がる赤い液体。口から耳から、裂けた肉の隙間から、おびただしい量の血が吐き出されています。
 解説の谷口さん、わたくし、墜落死は落ちた瞬間は無血で、その後じわじわと体液が体外に流出するものだとばかり思っていましたが、墜落の瞬間も案外すごい量の血が噴き出すんですね。
「人体の六十パーセントは水分だそうですが、それが実感できる映像ですね。映像には映っていませんが、接地角度から言って、腹も破れているはずですよ。血液の他にも胃の内容物や便が飛び出していることでしょう」
 なるほど。皮が弾けて中身が絞り出された風ですね。視聴者のみなさん、血に混じって細かい骨の破片も飛び散るのがご覧いただけますでしょうか。ものすごい衝撃です。物理学界の権威・伊刈信長博士によると、落下の衝撃は時速百キロで走るダンプカーとの衝突に匹敵するそうです。
 ダンプカーに潰されるイメージを喚起させる、わかりやすいリプレイ映像が用意できました。ご覧下さい。
(画面が横になり、支那戸は空中を走っているような姿勢になる。画面右側から巨大な壁が迫り、支那戸はグチャリと潰される)
 落下する支那戸と並行して移動した第五カメラ、その映像を左に九十度傾けてお送りしました。
 スロー再生でもう一度。
 はい。走り幅跳びで飛距離を伸ばそうとする陸上選手のように、支那戸は宙を蹴っています。支那戸の姿は画面中央に据えられたままですから、地面が支那戸に向かって突進してくるように見えますね。その衝撃はダンプカーの比ではありません、なにせ衝突してきた相手は地球ですから。重量がまるで違います。人体を粉砕する破壊力にも納得がいく映像ですね。
 ──さあ、いかがだったでしょうか。生中継でお送りしました、我が国今世紀初となる公開処刑。お楽しみいただけましたでしょうか。来週以降もみなさまの嗜虐性を必ずや満足させる出演者が続々登場いたします。ご期待ください。
 おや? 現場が少し騒がしくなってきましたが、何かあったんでしょうか。
(観覧席が映し出される。観客は声を合わせて何かを叫んでいる)
 おおー。お聞きいただけますでしょうか。観覧席からの壮絶なまでのアンコールが。刑の再執行を要求しています。公開処刑第一回目から、いきなりのアンコールです。
「これはやるでしょう。救命処置」
 谷口さんの言葉通り、今、満を持して医師団が出て来ました。すさまじい大歓声です。谷口さん、ここでアンコールの仕組みについて教えて下さい。
「はい。公開処刑におけるアンコールは、死にかけの受刑者を最先端の医療技術で蘇生させ、もう一度処刑する制度です。アンコールを行なうかどうかは、死刑運営委員会本部の判断によって決定されます」
 死刑ですから、死ぬのが前提なわけですよね。受刑者が瀕死の状態もしくは心肺停止状態になったとしても、蘇生させられるものなのでしょうか。
「凄腕の医師ばかりですからね。肉体が原型を留めている限り、どんな重傷の患者でも──たとえば腕がもげたり脚部が胴体にスッポリめり込んだり、頸椎が完全に破壊されたりしていても、そうですね、まあ三十分もあれば意識を取り戻してですね、ある程度の障害は残るとしても、また苦痛を存分に感じられる五体そろった身体になるのではないでしょうか」
 医学の進歩はカラ恐ろしいですねぇ。──さあ、施術が始まりました。あ、これ、患部に直接手を突っ込まれて藻掻き苦しんでいるみたいですが、麻酔は使いませんか。
「それはもちろん。麻酔の効果が残ってしまったら、フラフラしちゃって刑の再執行に臨めないではないですか(笑)」
 あ、それもそうですね、失礼いたしました(笑)。ところで、応急処置を施したとして、しゃべれるまでに回復するものでしょうか。
「今回は脳漿が散っていますから、ひょっとすると高度な言語活動は難しいかも知れません。しかし、あの程度の外傷なら、ある程度のコミュニケーションを交わせるまでには回復するはずです」
 もし、少しでもしゃべれるとしたら、今の支那戸は何とコメントするでしょうか。
「もう許してくれぇ、じゃないですかね。まあ、許しませんがね」
 お茶の間の皆様、応急処置が済み次第、ゲーム再開です。もうしばらくお待ち下さい。──えー、と、お待ちいただく間、アンケートにお答え下さい。アンケートの質問は『二度目の死刑は何が良いか?』です。二度目の死刑は、何が良いか。極西テレビにどしどし回答をお寄せ下さい。お待ちしております。
 うーん。もう一度突き落としを見たい気もしますけどねー。個人的にはピタゴラ装置式処刑も見てみたい。
「何度もアンコールすればいいんですよ」




この記事に対するコメント

■ 
すごい
【2014/05/17 13:58】 URL | m #-


■ コメントありがとうございます
作者お気に入りの(数少ない)1作です。
【2014/05/19 17:11】 URL | 大塚晩霜 #-



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