とりぶみ
実験小説の書評&実践
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    大塚晩霜
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エメラルドの都   (2008/02/28)
 ああ、麗しの、エメラルドの都!
 ついにやって来たぞ。とうとう到着した。オズの魔法使いの舞台、全てがまばゆいばかりのエメラルドグリーンで彩られているという、不思議な都に!
 高い高い城壁。都をぐるりと取り囲んだ黄土色の長大な壁。この内側に、憧れの美しい都市と、そして、大魔法使いオズの宮殿が、ある…。感動で思わず涙がこぼれそうだ。
 城門は重厚な扉によって堅く閉ざされている。門番に許可を得て開けてもらわなければならない。はやる気持ちを抑え、見学の手続きをする。
 書類に必要事項を記入し終えると、色メガネを渡された。ああ、物語そのままだ。嬉しくなってしまう。エメラルドの都はあまりにもまばゆく光り輝いているから、魔法のメガネで目を保護しなければ失明してしまうのだ。おっかなびっくり、それでもわくわくしながら、私はメガネを装着した。
 メガネ?
 これは、どちらかと言えばマスクだ。顔全体を覆う造りになっている。原作とは少し異なるようだ。
 全ての手続きを滞りなく完了し、いよいよエメラルドの都へ。鉄製の門扉が今、威風堂々重々しく道を譲る。
 驚いた。
 再び感動した。
 今度は本当に涙がこぼれた。
 エメラルドの都、想像以上の美しさだ。想像を絶する。
 辺り一面に粉末状の翠玉をまぶしたような、自然界には存在し得ない人工美。全てがエメラルドグリーンだ。宮殿も、塔も、家も、レンガ道も、ベンチも、芝生も。美しい。ただただ美しい。
 まさしくここは、おとぎの国だ。マンチキンと呼ばれる住人たち。彼ら侏儒の着ている服はメルヘンチックなデザインで、色は明るい緑色。道行く人は皆つぶらな瞳でニコニコ微笑みかけてくる。子どもたちは二階の窓から手を振ってくれる。頭の大きな、賢そうな子どもたちだ。
 全てがエメラルドグリーン。地面も、畑も、住民も、空気さえも。都市丸ごと宝石で製造されている。
 宮殿から緑青色の川が流れていて、その上に小橋が架かっている。橋の上から川面を見つめると目がくらむほどキラキラ煌めいている。羽の生えた魚が無数に泳いでいる。極彩色のウロコに覆われた鳥が水面を優雅にダンスしている。まるで夢のようだ。どうやらこの川を流れる美しい水こそが、この都に活気をもたらす魔法の根源らしい。
 川べりで人々が談笑し、洗濯をし、水遊びをし、のどを潤している。六本足の真っ青なカエルが跳ねている。五本の尾を振る犬。なわとびをする四つ目の女の子。三本の腕で器用にギターを弾く男の子。タコのような肢体で双頭を支える女の人。肩から生えた一本の足で逆立ちしてピョコピョン歩く男の人。みんな笑顔で歌っている。まるで夢のようだ。
 現実離れした光景に恍惚としていると、マスクをかぶった門番が見学時間の終了を告げに来た。わずか十分間の滞在。もう少し居たかったが、これ以上の長居は認められないらしい。
 私は残念に思いながらしぶしぶ都の外に出た。
 メガネを返却し、健康診断を受け、高い高い城壁を見上げる。薫り高い風を鼻腔に感じながら、私は惜別の感傷に浸る。
 さらば、美しきエメラルドの都、メタミドホスを呼吸する都よ。願わくばオズの魔法で子々孫々に渡って繁栄し、恒久の平和あらんことを。


参考
すばらしいオズのエメラルドの都
七色に輝く河川




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