とりぶみ
実験小説の書評&実践
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環情線   (2008/01/03)
 公共の場で、他人を気にせず大声でしゃべる人、信じらんない。許せない。ああいう人ってモラルがないのかしら。自分さえ良ければそれでいいと思ってる。信じられない! しかもああいう、品の無い話を、公衆の面前で声高に話すなんて。どういう神経をしてるんだろ。ああいう、エッチな話。たくさんの人に聞かれて恥ずかしくないのかな。もっと声をひそめるとか、私的な場所で話すとかさ。他にいくらでも方法があるはずじゃない。いいえ。どこであっても、ああいう話はしちゃいけないよ。殊に、周りに人がいっぱい居る場所だったらね。でもあれってもしかして、あえて他の人に聞いてもらいたいと思ってたのかな。特殊な性癖の持ち主で。恥ずかしい姿を他人に見られるのが快感っていう、一種の露出狂だったのかも。真正の変態ね! 公共施設の中で会話するんだったらさぁ、人の迷惑にならないように、これくらいの声量で、まじめな話をするのがいいと思うんだよね。誰も不快に感じない、まともな話題をさ。
 ひとを不快にさせる会話のやりとりもダメだけど、タバコもダメだよね。すっごく迷惑。くさいしケムいし吸ってないこっちまで副流煙でガンになるし環境を破壊するし毒が含まれてるから生き物がバタバタ死んでいくし赤ちゃんがバカになるしタバコ税は年金問題を解決しないし喫煙者はたいてい低所得者だからタバコが値上がりすると失業率も上がるし…。いいこと全くない! 世の中の喫煙者を全て処刑すれば、地球の空気がどれだけキレイになるか。喫煙者を地上から除去すればかなりの量のCO2が削減されるはずだよ。
 環境と言えば地球温暖化。暑いよね。ヤバいよね。問題だよね。熱いヤバい間違いないよね。オゾン? ヤバいよね。オゾンホールだっけ。ヤバいヤバい。このままだと地球はどうなっちゃうんだろ。熱くなってさ。紫外線だっけ。あれ? 赤外線? よくわかんないけどその辺のあれも増えて、ああ、紫外線だね、あれって肌にも良くないんじゃなかったっけ。それは別だっけ。とにかくヤバいよね。タバコが良くないんだよ。空気を汚すから。吸わないわたしたちまで害をこうむるとか有り得なくない? タバコを吸う人はみんな死ねばいいのに。肺ガンで死んじゃえばいいんだよ。マジで。地球温暖化、マジヤバなんだから。神様は怒ってるよ、きっと。
 神様と言えばさぁ、こんな話があって。江戸時代のね、踏み絵の話。踏み絵って、もちろん知ってるよね。そうそうそうそうキリスト教を禁じてた江戸幕府がさ。こっそり信仰を続ける不届き者、隠れ切支丹ってんだけどね、そいつらを見つけ出すためにやったあれ。聖母マリア様の版画を踏ませたってやつ。うんうん。あ、今わたしたちなんだかとっても崇高な会話をしていると思わない? ね。やっぱりさ、公共の場ではこういう話こそふさわしいよね。でね、その時にさ、隠れ切支丹が二人、嫌疑を受けて踏み絵をさせられたんだって。その二人、それぞれ対応が違ってね。まず一人目は、いけしゃあしゃあと絵を踏んで、帰宅後に懺悔したんだって。こんな風に、そう、『天にまします旦那様、どうか許しておくんなまし! ほれ、聖書にも、あなたこそが救われるべきです、と書いてある。えっ、お許しなすって下さるんですかい? おお、でうす様…!』ってね。かなりズーズーしく自己完結したってわけね。でもその後、その人の人生に特に影響が出たという話はなかったそうだから、神様の御慈悲は無限大だよね。一方、隠れ切支丹二人目は、『とてもじゃないがマリア様を踏むなんて出来ません絶対』って、バカ正直に拒否して、それが元でキリスト教徒ってことがばれて、処刑されちゃったんだって。その人は、殉教者として仲間内からは讃えられたらしいけど、異教徒からは──あ、異教徒っていっても当時は仏教の方がメジャーだったから切支丹の方がむしろ異教徒だったんだけどさ、その異教徒である仏教徒たちから、さんざん罵られ、手痛い呪いの言葉を投げつけられたそうだよ。いったい、救われたのはどちらだったんだろうね。ウソをついて生き長らえた者か、真実を通して死んだ者か。死んだ者だとして、神様の御加護はあったのかな。案外その殉教者はイエス様のお膝元じゃなくて、仏様のお膝元に連れていかれちゃったかも知れないね。こう考えると、ウソも方便だよね。
 ウソって言えば、こんなホラ話があって。ゴム長靴の中で魚を飼う男の話、知ってる? 物置のそばに放置されたゴム長靴の中に、濁った雨水が溜まってるんだけど、その中に釣り糸を垂らして魚を釣る男がいるんだって。で、そればかりじゃなくて、その男、釣った魚を焼いて食べちゃうんだって。しかもしかも、その男、外出する時はそのゴム長靴をそのまま履くんだってさ、水や魚が入ったままのゴム長靴を。この話、何の比喩なんだろう。シュールすぎて何の意味があるのか、よくわからない。
 シュールと言えばこの詩も謎。最後の行が、意味がわからない。ケータイのサイトから見れるんだけどさ、うーんと、ああ、これこれ。読むね。『あの子はいっちゃった。クリスマスを迎える直前に。』ここで改行。『あの子はいっちゃった。12月24日、クリスマス・イヴに。』ここで改行。『12/24は、約分すると1/2になる。2分の1。』改行。『ひとつだった僕たちは、今はもう半分。』改行。『僕の心は半分にえぐれたようにポッカリと穴があいた。』改行。ここまではいいけど、このあとが。意味もわからないけど、早口言葉みたいで、うまく読めるかどうかもわからないわ。ゆっくり読むからね。『いちゃいちゃしようといっちゃった僕はいっちゃったらあの子はいっちゃってはいちゃっていっちゃっていっちゃった。』これって、どういう意味だろ。最初の『いちゃいちゃ』はわかる。その次の『いっちゃった』は? ああ、『言っちゃった』かな。うーん、あ、そうかも、その次の『僕はいっちゃったら』って、もしかして、『僕入っちゃったら』かも知れない、『僕は、いっちゃったら』じゃなく。鋭いね~。オチンチンをあの子に入れたってことかも。そうすると、『あの子はいっちゃってはいちゃって』って、性的にイク絶頂を迎えて、それでゲロを吐いちゃってってことか。ああ、きっとそうだよ。すごいね。冴えてるね。で、頭がイっちゃって、天国に逝っちゃったって。そうだそうだ。きっとそうだよ。さすがぁ。読ませて良かったわ。最後の行、意味がわからなくてモヤモヤしてたの。そっか、これはクリスマス・イヴに慰撫し合ってたカップルの腹上死を謳った詩だったんだね。絶頂と共に昇天して、天国にイッたってわけだ。なるほどぉ。
 あ、着いた。降りよっ」
 会話をしていた二人組は突然座席から立ち上がり、急ぎ足に下車した。
 その二人組を悪意ある眼で見送った女が、棘のある語調で隣席の友人にひそひそと話しかける。
「何あの人。信じらんない。わたし、ああいう人ダイッキライ。(小説冒頭に続く)




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