とりぶみ
実験小説の書評&実践
【小説】昔のTシャツ   (2017/09/09)
(作者のつぶやき)
 人生に関する攻略本、みたいな小説を書こうとして。。。たのが1年前。
 今や死に行く文化である「ゲーム攻略本」に想いを馳せ、オマージュしようと計画していた。やったこともないRPGの攻略本を参考資料として買い集めたりもした。
 しかしいかんせん、あつかうテーマが「人生」と大きかったため、頓挫して、放置してた。
 で、さっき、「好きな作家の新作出ないかな」と検索してたら、新刊発見。なんとアイデアが人生の攻略本で丸かぶり。
 俺の作品、お蔵入り!

 以上、酒に酔いつつ思いついたままの垂れ流しでした。
 以下、それとはまったく別のショートショートを書きます。(酒が入ってないと書けないって、わしゃ李白か)



 洋服ダンスを整理していたら、もう何年も着てないTシャツが何枚も発掘された。もはや自分の趣味ではないガラや、年齢不相応のプリントなど、今後2度と着る機会はあるまいなと思える連中が、引き出しの底で腐乱死体となって折り重なっていた。
 そんな中、一見すると血まみれかとも思える赤黒く染まったシャツがちらりと顔を覗かせ、おやこれは面妖なと思って広げてみた。ででーん。ダークレッドの顔色をした強烈なインパクトの顔面。なんだろう、皮膚病か何かなのだろうか。全身の毛穴から血が噴き出す感染症にでも罹患したのか、見る者に恐怖と不安を与えるおっさんのドアップ。鼻の穴おっぴろげ、大きくかっぴらいた口にはのどちんこ。右隣にゴキブリでもいらっしゃるのだろうか恐怖にゆがんで何かを見やるお目目。ドアップ過ぎて髪の毛・耳・アゴははみだしていて見えない。
 アルバムジャケットの名作としてとみに有名な、『クリムゾン・キングの宮殿』のジャケット。キング・クリムゾンというロックバンドのファーストアルバム。かれらの代表曲「21世紀の精神異常者」収録。これをプリントしたTシャツだ。ちょっとまぎらわしいけど、「キング・クリムゾン」がバンド名で、「クリムゾン・キング」がアルバム名である。
 たしかこれは、下北沢の古着屋で衝動買いした。もしくは東京タワーの今は亡き蝋人形館だったか。あるいは吉祥寺のディスクユニオンだったか。ずいぶん昔の話なのではっきりとは覚えていないが、買って後悔したことだけはなんとなあく覚えている。
 ロック愛好家で知らない者はない有名ジャケットであり、インパクト大なのだが、インパクトが強すぎた。これを町中で着るのは気が引けたし、キング・クリムゾンの来日公演に着ていくならともかく、普通一般のライブで着ていくにはアクが過剰に濃厚。結局、1度しか着なかった。それも、買ってからすでに3か月以上が経過していた冬のこと、当時つきあっていた彼女とラブホテルで首脳会談をするときに着たっきりだ。彼女を驚かせるためにコートやらセーターやらで厳重に防備していた一番下に装着していたのだ。ネタとして着こんでいたのだ。しかも、この、キンクリちゃんだかクリキンちゃんだか知らないが、ヒンバ族の男性版みたいなこの男性の、顔面の一部を棄損していた。キンクリちゃんだかクリキンちゃんだかは瞳の色が赤いのだが、そこをハサミでくりぬき、着れば装着者の乳首が出るように細工をほどこしたのだった。
 今回の遺跡発掘で、おそらくは十数年ぶりの邂逅となった。瞳の部分には十数年前のあの日と同様、しゃれこうべのウロのようにふたつの穴があいていた。
 やるせない気持ちになり、しばらくTシャツと見つめあった。せっかく買ってもらったのにたいして着てももらえず、しまいにはネタとして穴をあけられた不憫なTシャツ。ごめんねとつぶやくと自然と涙がにじみでた。
 罪悪感と使命感にさいなまれ、およそ4000日ぶりに袖を通した。十数年前には生えていなかった長い乳毛がそこから垂れ下がった。まるでキンクリちゃんは泣いているようだった。
 不思議な高揚感があり、そのままの状態で発作的に家を飛び出した。人殺しをしてきた直後のような心境で駅に向かった。すれ違う人すれ違う人が不審に思って小首をかしげているような殺気を感じた。
 駅前の笑笑に入り、とりあえず生と枝豆を注文した。若い店員から「そのTシャツ、ジョジョのボスのスタンドですよね」と意味不明なことを言われた。
 「生中と、枝豆おまたせしました」
 店員のデカい声で乳毛が揺れた気がした。



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