とりぶみ
実験小説の書評&実践
【小説】犬を探しています   (2017/10/19)
 おひさしブリーフ&トランクスの「青のり」(名曲!
 さっぱり更新してませんがボクは元気です。多忙だった? いいやヒマです。ニートかってくらいヒマです。ヒマすぎるとヒトはダメになりますね。求む仕事! 政府主導の箱モノの顧問みたいな、月に1回顔を見せればそれだけで年俸2000万円みたいな名誉職、一生懸命がんばります。

 この短編は8月31日に書き上げようと思っていて放置してました。2カ月経ってしまうとは思わなんだ……。



    8/31
 夏やすみが終わるからもう死にたい。おく万長者が、だつぜいがバレてろう屋にぶちこまれるときって、こんな気持ちになるのだろうか。ろう屋に入ったら、もうおいしいやき肉やステーキやおスシが食べれない。それから、コロッケやカレーライスやラーメンや、それから、パフェやクレープやうまい棒やポテトチップスやケーキや都こんぶ、それから、しゃぶしゃぶ、フグさし、うな重、キャビア、タラバガニ、うに、海鮮丼、牛丼、カレーライス、天丼、天ぷら、エビフライ、ハンバーガー、フライドチキン、フライドポテト、ポテトチップス、カレーライスも食べれなくなる。あんぱんも食べれなくなる。そんなのってイヤだ。それから、テレビゲームもできなくなるし、マンガもよめなくなるし、ポケモンGOもできなくなるし、ゲームセンターに行けなくなるし、ポケモンセンターにも行けなくなるし、プラモデルも作れなくなるし、カラオケにも行けなくなる。セミもとれなくなるし海にも行けなくなるし山にも行けなくなるししぶ谷駅前のスクランブル交さ点にも行けなくなるしエロ動画も見れなくなるしピンサロにも行けなくなるし鳥貴族もね上げする。ハンドスピナーもぼっしゅうだ。そんなのってイヤだ。
 だから、夏やすみが終わるのはイヤだ。死にたくなる。だから、夏やすみは終わらなければいいと思う。
 夏やすみを終わらせないために、ぼくたちは一ちだんけつした。ぼくと、ヨシくんと、ノリくんと、山田は。さいこうのおもい出を作ってやるぞ。そんなわけであさの8じに学こうにしゅう合して、ぼうけんに出かけようとおもったのだ。
「さあ、しゅっぱつだ!」
 みんながガッツポーズをしたしゅんかん、ヨシくんが
「なにこれ」
 こうもんのすぐそばのでんちゅうに、1まいのポスターがはってあるのに気づいた。
「イヌをさがしています。だって」
 あんにたがわぬ犬のしゃしんと、イヌの名まえ・とくちょう、かいぬしのれんらく先があった。
「高木か。かわった名まえだな」
「そりゃかいぬしの名まえだろ。ワンちゃんはジェロームだよ」
「かっこいい名まえだね。犬しゅはラブラドールか」
「ジェローム・K・ジェローム」
「イヌってわりといろんな名まえがつくけど、ネコの名まえって食べものの名まえがつく率、いじょうに高いよな」
「そういえばそうだな正田んちのネコ、名まえトマト」
「鈴木さんのネコはおでんだ」
「『0655』のねこのうた見てても、やたら食べもの出てくるよ」
「あとはほら、マシュマロとか、プリンとか。マグロとか、アワビとか、アカガイとか、ワカメザケとかな」
「うーん。高木さん、かわいそう」
「なにか協力できないか」
「ふまんがあって、にげ出したんじゃないか。おれだって、家出したいもん」
「よおーし。おれたちでジェロームを見つけないか」
「いいね!」
「さんせい」
「だいぼうけんのはじまりだ」
 こうして、ぼくたちはジェロームさがしのたびに出かけた。
 あきらめた。
「いないね」
「そうかんたんに見つかるわけないし。これで夏やすみさいごの大じな1日がオシャカになるってどーなの」
「あきらめるかー」
「でも、どうにかしてあげたいよね」
「とは言ってもなあ」
「あ。そういえば山田、おまえこのイヌに似てないか」
「そうかなあ」
「そうだおまえ。吾輩がジェロームであるってことで、この高木さんのところに出頭しろよ」
「え、なにそれ」
「いいねいいね」
「やだよ」
 高木さんは、目がすこしふ自由なおばあちゃんだった。ジェローム見つけましたと言うと、たいそうよろこんでくれた。
「で、どこなの? ジェロームちゃんは」
「ここです」
 おずおずと一ぽ前に出る山田。
「ジェローム! ああ! 会いたかったよ!」
 高木さんは山田をジェロームだと思いこみ、だきしめた。ぼくたちは何ども何どもおれいを言われた。おれいのことばより現金をよこせとおもったが、そういったネゴシエーションのスキルをみにつけてなかったのでだまって引き下がった。ぼくと、ヨシくんと、ノリくんは、かるく舌うちをして高木家をあとにした。
 それからゲームセンターのメダルゲームに入りびたり、あたりめを肴にコーラをチビチビチやっていると、すっかり日もくれて、ぼくたちはちょっと心ぱいになった。
「山田のお父さんお母さん、心配してないかな」
 山田の家を偵察することにした。みすぼらしいアパートの一しつに斥候のノリくんが潜入すると、そこではジェロームが山田家で山田のかわりをしていた。ジェロームはコール・オブ・デューティーで10キル1デスをたっせいしていた。
「かえるか」
「ああ」
 こうして夏やすみさいごの日は終わった。
 そのよる、ぼくはねむりの中で、てっきゅうをつけられたホリエモンガリガリにやせほそっていき、さいごにはハゲタカについばまれる悪夢にうなされた。学こう行きたくない。



    9/1
 新学期。若年層の自殺がもっともおおい日はこの日だそうだ。ぼくもすごくユウウツだった。でもぼくには、ヨシくんと、ノリくんと、山田がいる。おおい日でも安心。
 朝れいがはじまるまでノリくんと重森三玲の茶の湯の美学について語りあっていると、ちこくギリギリで山田がとうこうしてきた。きょうしつからどよめきがあがった。まっくろなはだ、せいかんな顔つき。山田のやりすぎたイメージチェンジに、クラスのみんなはチョーおどろいていた。
「山田」
 山田はハッハッハッハッとせわしない息づかいをしながらこちらをちょっと見ただけで、おはようすら言わなかった。
「なんだあいつ」
「なに気どってんだ」
 女子に急に持て始める山田。
「きゃー!かわいー!」
「山田くん、今日いっしょにおべんとう食べよ!」
「山田くん、ほうかご、ひま?」
「だいて!」
 夏のま物にどうていをひろってもらった男子、もしくは2学期からのヤンキーデビューのごとくモテていた。ぼくたちはそれを遠目で見ながら、なんだか山田が手のとどかないそんざいになってしまったかのように感じていた。
「あいつ、変わったよな」
「おれたちの中でいちばん下っぱだったのに」
「ぼくたちとの友じょうを、わすれたのかよ」
「あんなやつ、もう友だちじゃねえよ」
 一方そのころ、ジェロームは全裸でババアの顔をペロペロなめていた。しっぽが腹からぶら下がってやや弾性をともなって揺れていた。
「おーよしよし! さんぽ行くかいさんぽ。それとも、なにか食べるかい。なにが食べたい」
「カニしゃぶ」



   9/19
 山田はその後、ソフトボール部のキャプテンとつきあいはじめた。そいつは男みたいなショートカットで、まあ、正じきあんまりび人じゃない。とは言っても、ブスでもないけど。なんか、女っぽくないから、れんあいたいしょうではない。でも、せいかくはあかるくて、したしみやすいっつうか、男っぽいからか男子たちとは仲がよくて、まあ、ぼくもよく見てるアニメの話なんかしてた。かみをのばせばけっこう女っぽくなるのかもしれないけど、まあ、ナシだよな。むねはけっこうふくらんでるけど、アリかナシかで言えば、ナシ。だって、オトコオンナだもん。かおはまあ、どっちかっつうとととのってるし、みがけばひかる、っつうか。でも、友だちとしてはアリでも、れんあいたいしょうとしてはナシ。まあ、あっちからどうしてもって言うなら、つきあってやってもいいかとは思うけど、ぼくてきにはナシ。だからべつに、山田がつきあっても、うらやましくない。おしあわせに、ってかんじ。
 そのご、山田ともすっかり口をきかなくなった。ぼくが何か言ってもだいたいダンマリをきめこんでいる。こっちの目を見てわらうので、かんぜんにむしをしているわけではないのだが、何を言っても答えない。もはや友だちどころか知り合いですらない。
 今日、体育館のうらで、山田がソフトボール部のキャプテンの股をなめまわしていたのには閉口した。なんだよキモチワルイ。くっさ、そー、オエー、って感じ。



    10/19
 高木昌子O-157により87歳で逝去。喪主は飼い犬のジェローム。



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