とりぶみ
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言葉狩り   (2007/10/18)
くだらない小説を書きてよろこべる
男憐れなり
初秋の風
      ──石川啄木『一握の砂』より



われはこの牧場まきば
自給自足にて
晴耕雨讀を営めり

さまざまな家畜を飼ひたる
わが牧場
牛豚羊鶏魚

さまざまな野菜を植ゑたる
わが牧場
むぎ人參にんじん大根白菜

薩摩芋牛蒡ごばう馬鈴薯ばれいしよ
玉蜀黍たうもろこし茄子なすねぎ胡瓜きうり
キヤベジレタス

手懐てなづけし禽獣きんじうかこ
柵の中
われに群がる給餌きふじのひととき

喰ふための
食材としてはぐくめる
家畜なれども情も移れり

雌豚の頭を撫でし
その時に
柵の外よりヤツら來たれり

十四五人
老若いずれも男にて
各々武噐を手に吶喊とつかん

柵を、のりを越えて
闖入ちんにふせしヤツら
ち殺さるるわが家畜たち

わが制止のこゑむな
聞かれまじ
むごき殺戮は止まらざりき

見る見るうち
無抵抗の動物の
死骸累々死骸累々

われ叫ぶ
「うぬらの働く狼藉は何のいひぞ」と
聲を限りに

叫べども一向に腕を止めむとせず
わが畜を打つ
屠殺とさつの腕を

緑なりき
赤く染まりたる牧草の
なびきしは今や血深泥ちみどろの沼

血の匂ふわが安らぎの地
「な殺しそ」
聲を限りにわれは叫びぬ

ヤツらのうち
をさと思へるハゲオヤジ
われに向かひてくすくす笑ふ

「この牛や豚や羊や鶏は
 危險がゆえに
 殺してしまふ」

「何が危險
 無害にあらずやわがけもの
 だつてこんなに大人しいぢやんか」

「人を噛む噛まないの議論にやあらず
 あきらめよ
 これはおかみのお達し」

ののしりしわれには構はず
動物をほふつてわら
男たちの目

腦天を重き斧にてかち割らる
優しき牛の
斷末魔の聲

豚に似し男が
豚を殺し言ふ
「なれの家畜は不愉快なるかな」

めえめえと
命乞ひするわが羊に
振り下ろさるるなたの一撃

うらめしや
馬がいななき犬が吠ゆ
わが下僕たちに何の罪やある

ぢつとにらむわれの視線を
にしてか
「俺はこいつにアレルギイあり」

つまり何か
なれの都合が原因で命取らるか
わが鶏は

傳染病でんせんびやうでも持ちたれば
仕方無し
間引かるるのも承服すれども

とがも無く斷罪さるる
わが家畜
命を奪はる理由は「不快」

毒を飲む
養殖池の魚たち
水面みなもに浮かぶ白き腹かな

丹誠たんせいを込めし彼らを處分しよぶんされ
ほほつたひぬ
ぬるき涙が

「今日からは
 なれは野菜を食べるべし
 生臭なまぐさの調理一切を禁ず」

捨て台詞ぜりふ
吐きて去りぬる男たちの
背をわれ睨み血に膝を着く

人を毀損きそんするあたふ強き獣なれど
あまりに慘し
慘きかな嗚呼ああ

味氣あぢけなき精進しやうじん料理ぞ出來上がる
辛みもぞなし
野暮つたき味

ふとめる牧場ぼくぢやうの夢
あれは夢
しかれど頬には涙のあとかも

書きかけの原稿用紙を枕にし
〆切しめきり前に
眠りたるらし

ハゲオヤジが
寝惚ねぼまなこのわれを
苦き顔してふみしゆ

咎も無く斷罪さるる
わが言葉
命を奪はる理由は「不快」

めくらなる語句を用ゐることなかれ
 目不自由なる
 人に失禮しつれい

 つんぼなる語句を用ゐることなかれ
 耳不自由なる
 人に失禮

 びつこなる語句を用ゐることなかれ
 足不自由なる
 人に失禮

 白痴はくちなる語句を用ゐることなかれ
 馬鹿に馬鹿てふ
 馬鹿に失禮

 とくと知れ 
 乞食こじきを乞食と書くなかれ
 家なき者はホオムレスなり」

われは問ふ
禿はげにハゲとは言ふまじや」
ハゲオヤジ殿「然り」と答へり

われは
「さればなんぢ
 毛髪の不自由な方とお呼びすべきか」

わが料理の味をピリリと引き立てる
一匙ひとさじの毒
一言の語

わが言葉がたれかの舌をいためても
われは譲らじ
言葉に咎無し

わが言葉は命を持てり
生きて御座居
いずれも可愛き下僕たちなり




この記事に対するコメント

■ 
これから先の時代、
どんな規制をされても
創作する心は自由でありたい。
でなきゃ言葉も線も活きませんからね。
【2007/10/23 12:42】 URL | arty. #-


■ 
 啄木の時代よりはマシですが、近年、言葉に関する規制が段々厳しくなってきました。不穏な空気です。「創作する心は自由でありたい」、激しく同感です。どのような向かい風が吹こうと、我々創作家は信念を貫き、おのれの色を堅持したいものですね。

 さて。
 この作品、1年以上前に構想していたのですが、内容に見合う文体がなかなか見つからず、ずっと完成せずに放置されてました。ところがつい最近100円ショップのダイソーで『一握の砂』を買いまして、大きな感銘を受けまして、短時間で一気に書き上げました。
 575のリズムを無視して短歌を3行に分けるスタイル、これは啄木の専売特許にしておくのは勿体ない、すばらしい形式です。すばらしい発明。こんな凄い作品をなぜ今まで読まなかったのか過去の自分を厳しく責めたいくらいです。
 artyさんも機会があれば『一握の砂』、読んでみて下さい。おすすめです。
【2007/10/25 00:41】 URL | 大塚晩霜 #-


■ 
啄木~国語の時間に読んだような気が(-"-)
(作品は覚えてないのに何故かバッチリ顔覚えてる)
古いものから新発見ですね☆それにしても、素直に先人の技を借りれるのって、羨ましい!
啄木先生風スタイルでも、晩霜先生が効かせるスパイスで自分にしか書けない作品に仕上げられるんだもんなぁ~
いやはや、またもや、お見逸れしました(u.u)
明日100均行って啄木先生探してみよう。
【2007/10/27 21:57】 URL | arty. #-


■ 京葉線の車窓から
そりゃそうとartyさん、今、新浦安に来てらっしゃるんですって?なんたる運命のイタズラ。私今から新浦安駅を通過します(笑)

駅前のイベントのお仕事っていうのはどんなのですかね。午後、余裕があれば立ち寄ってみようと思います。万が一会えることができたら、自家製の大塚晩霜版『文体練習』をプレゼント☆

会えるといいですね。
【2007/10/28 05:28】 URL | 大塚晩霜 #-


■ うーわーー
なんてこったい!
そうでしたか~知らんかった(-_-;)
文体練習読みたかったあぁぁぁ。
今日は八百屋さんやってました(うちの会社は色々と小さい店を出してまして、新浦安駅ビルに支店があるんです)
わたくし本日かなりの大声上げて、売り子というか客引きしてました(xへx)大恥もんです。
あー残念すぎるな!読みたかったよーー!
【2007/10/28 19:52】 URL | arty. #-


■ 
自家製『文体練習』は粗雑ですが世界に一冊しかない手作り本。自分のために作ったものなので本来ひとにはあげたくないのですが、またとない奇跡的な機会ゆえ、関東みやげとして特別に贈呈しようと思ったのです。残念。

またいつかチャンスがあれば!
【2007/10/30 05:51】 URL | 大塚晩霜 #-


■ うぅむ残念!
でも、大声でお野菜売ってる時に出くわさなくて一安心(^∀^;)
出来れば販売員よりも、絵描きとしてお会いしたいですからね(~u~)
また機会があったら、どうぞ一つ宜しく!
【2007/10/30 18:45】 URL | arty. #-



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