とりぶみ
実験小説の書評&実践
【書評】佐藤雅彦『任意の点P』   (2017/05/17)
PointP.jpg

 佐藤雅彦さんの本を取りあげるのは『Fが通過します』以来です。
 まあ実際には「慶応義塾大学 佐藤雅彦研究室」によるグループワークであり、佐藤先生は1作も作っちゃいないんですけどね!(企画・構成と前書きのみ)




 まずはAmazonの商品説明を引用しましょう。

だんご3兄弟でおなじみの佐藤雅彦が贈る立体視のビジュアルブック。表紙の端が折畳式のレンズになっており、それを通して各ページを覗き込むと、見る人の脳の中に今までに見たことのない立体がくっきりと現れる。

本書は、従来の立体視の本とは違い、現実の生物や建造物の写真を素材とせず、作者たちの脳の中に勝手に立体視として現れたイメージを元にしている。本書に収録されたものはすべて、読者の右目と左目から異なったデータを入れ、読者の内部であるその脳で、立体像を合成させるものである。その結果、かなり現実離れした想像上の図形も、逆にリアリティーを持って確かに現れ、読者を魅了するのである。立体レンズ付き。

 昭和世代だと3Dメガネ=赤と緑のフィルムという認識かと思いますが、この本にはレンズが2枚ついています。
(体裁についてはこちらこちらのブログがわかりやすいのでご参照ください。)




 画像が立体に見える! ってのは世紀末に流行しました。「ステレオグラム」と言います。日本で流行ったのはこういうやつ。
Stereo01.gif
 ウィキペディア先生によれば、これは「ランダム・ドット・ステレオグラム」というそうです。 2つの黒い点が3つに見えるよう視線を交差させる(寄り目にする)と、画像が浮かび上がってきます。




 で、件の『任意の点P』は「ステレオペア」というスタイルだそうです。いくつかご紹介しましょう──と思ったけど画像を準備するのが予想以上に面倒なことが判明(自力で立体視をするためには小さめのサイズでなければならない)。
 再度こちらのブログを紹介することによりごめんこうむります。
 なお、この分野での向後100年の金字塔となるであろう「衛星 東経97度20分 南緯26度12分」は、実際にその目でお確かめください。声が出るほどすごいです。

 モニター上で立体視をしようとすると吐き気に襲われるかも知れませんが、実際の本ではレンズを覗くだけでアーラ不思議、誰でも手軽に立体画像を見ることができます。そして、立体視では到底感じ得ない「実在感」が、レンズの中には厳然と存在します。「クレバス」の底の深さなど、少し怖くなるほど。
 版元(「美術手帖」でおなじみの美術出版社)には在庫があるようですが、Amazonは在庫切れです。マーケットプレイスに安く出品されていますので気になった方はぜひ。



 で。
 でですよ。
 今回わざわざ書評したのは、各作品の作者をあらためて確認したら驚いて目ん玉が2ミクロンくらい飛び出したので、その報告をしようと思ったからなのですよ。
 「慶応義塾大学 佐藤雅彦研究室」のメンバーであった、当時大学生だった面々。

山本晃士
石川将也
川村真司

 プロモーションビデオやEテレ(旧・NHK教育テレビ)のファンならばピンと来るかも知れません。

 山本さんは本名「山本晃士ロバート」という1度見たら忘れられない名前であり、僕の目ん玉を2ミクロン飛び出させるきっかけを作ってくれました。「あ。これ、あのロバートだ」と。石川さんらと共にクリエイティブグループ「ユーフラテス」として、知的好奇心を触発する番組「ピタゴラスイッチ」「0655」「2355」を手掛けています。

 川村さんは、最高の映像技法番組「テクネ 映像の教室」の企画を担当。最近では安室奈美恵 「Golden Touch」のプロモーションビデオが世界的に大ヒット(Youtube1000万回再生達成)しました。感触を感じさせる点において前人未到の映像と言えましょう(師匠佐藤雅彦の仕事『指を置く』にインスパイアされてんのかな?)。

 『任意の点P』はすごい作品だけど、作ったのもすごい面々だったんだな。みなさん出世なさって……(感涙)。
 特に川村さんは48作中20作も手掛けており(山本さんは12、石川さんは8)、「このころからスゴかったんだな」と感嘆させられずにいられようか、いや、いられない(反語)。



この記事に対するコメント


お気軽にコメントをお書き下さい











«  | ホーム |  »